森と一体化した施設でワーケーション

 設備の特徴はいくつかあるが、最大のポイントは壁一面のガラス窓。「施設内のどこからでも、施設を囲む森林がよく見えるようにした」(赤堀氏)。セミナーも行える大部屋は40人が収容可能な広さ。無線LAN、コピー機、スキャナーなど、仕事に必要な基本的なスペックも備えており、「ノートPCを持ち込めばすぐに仕事ができるような体制が整っている」(同氏)とする。

ノマドワークセンターの内観(写真提供:Nature Service)
ノマドワークセンターの内観(写真提供:Nature Service)
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 ハードウエア分野の企業の利用も想定し、3Dプリンターや工作機械が利用できるメイクラボも併設した。敷地内にある森、傾斜地、草原、池、畑、道路は、ロボットのテストフィールドとしても利用できる。「ハードウエア系のハッカソンなどにも使っていただける」(赤堀氏)。

 もう一つの特徴は、法人向けの貸し切り施設であること。「新商品の企画など、セキュリティ性が求められる業務も安心してこなせる」(赤堀氏)。地方でも自然環境や景色を打ち出したリモートワークやコワーキングスペースが存在するが、貸し切り施設ではないことが多いという。第三者が出入りする余地があると、業務の中身は限定せざるを得ない。

 ノマドワークセンターでは、滞在プランに自然体験プログラムを盛り込むことを提案している。Nature Serviceでは基本的に週単位での利用を推奨しているが、例えば平日5日間のうち2日間、午後の一部時間帯を、ネイチャーガイドによる森林セラピーや近隣にある野尻湖でのウォータースポーツ体験に充てるといった格好だ。施設自体はもちろん自然の中に建っているが、より深く自然の中に身を投じることで「ワーケーションならではの滞在体験をしていただく」(赤堀氏)ことが狙いである。

 このようなコンセプトの法人向けワーケーション施設はまだ珍しい。そのためNature Serviceはこの5月、小泉進次郎環境大臣からの要請を受け、ワーケーションに関する意見交換をしたという。

 ノマドワークセンターのオープン期間は、冬以外の5月から11月。企業や団体からの利用予約が複数入っていたが、この4月における政府の緊急事態宣言、そして東京都による移動自粛要請を受けてキャンセルが相次いだ。

 しかし、コロナが流行る前に利用した企業や、三密を避けつつ見学に来た企業や省庁・団体職員からの反響は上々で、コロナ感染拡大が落ち着けば利用したいという声が相次いでいるという。赤堀氏は「見学に来られた方はおしなべて目をハートにして帰っていく。コロナ禍で厳しい状況ではあるが、森林というコンテンツの威力を改めて実感した」と語る。

 同施設の利用者の声を聞くことができた(Nature Serviceが9月10日に開催したオンライセミナーでの発言の主旨を筆者がまとめた)。

 企業向けのITサービスを提供しているHENNGEに勤務する水谷博明氏(Digital Intelligence Section / Section Manager)は、「自然の中に身を置くと、その後仕事の生産性が上がるという実感は前からあった。ここ(ノマドワークセンター)を体験すると、それを改めて感じさせる」と語る。「窓から外の山を見るだけで思考がリセットされ、思考の整理を促している感じがある。仕事場から遠くを見るなんてことは、都会ではめったにない。これは貴重だ」(水谷氏)。

 IT企業・Bizerの創業者で代表取締役を務める畠山友一氏は、「ノマドワークセンターに来て営業企画を考えている時に気がついたことなのだが、おおらかな気持ちでポジティブに発想している自分を発見した。気持ちのゆとりは、仕事のアウトプットの質に大きく関わるように思う」と語る(なお同社は2019年1月にパーソル プロセス&テクノロジーに株式譲渡、畠山氏は同社のワークスイッチ事業部営業統括部部長を兼務している)。

 環境省の三宅悠介氏(健康自然環境局国立公園課課長補佐)は、推奨プログラムの1つである森林セラピーを高く評価する。「当然、プロのネイチャーガイドに料金を支払うことになるが、それに見合う価値が十分にあると感じた」(三宅氏)。赤堀氏は「ガイドは相手の状態を推察しながら紹介するポイントを選択する。森や林の各部それぞれにリアリティがある。理解が深まれば、自然の中にいることがより楽しくなるはずだ」と添える。