コロナ禍でがん検診の受診者数が減少し、早期発見・早期治療に影響が出ている。日本対がん協会32支部がまとめた調査によれば、2020年1月〜12月における5大がん(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん)の受診者数は延べ394万1491人で、2019年との比較で30.5%の大幅減となった。減少した受診者数に2018年度のそれぞれのがん発見率を掛けて推測した結果、合計で約2100のがんが未発見になっている可能性があるという。

日本対がん協会がまとめたがん検診受診者数の比較(出所:オンラインセミナーのスライド)
日本対がん協会がまとめたがん検診受診者数の比較(出所:オンラインセミナーのスライド)
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 こうした中、がん対策推進企業アクションが「コロナ禍で検診率が低下する女性特有がんの予防」とのテーマでオンラインセミナーを開催した(関連記事:若い世代への「がん教育」が必要なワケ)。がん対策推進企業アクションは、職域におけるがん検診率向上を企業が連携しながら呼びかけていく活動で、受診率50%以上を目指すというもの。2009年に活動を開始し、現在約3500の企業・団体が推進パートナーとして加盟し、企業ごとに前向きな取り組みを進めている。

 セミナーでは、一般社団法人シンクパールの代表理事を務める難波美智代氏がコロナ禍でのがん検診率低下の危険性や、新たに台頭してきたフェムテックの可能性について説明した。難波氏自身が子宮頸がんを乗り越えた“がんサバイバー”であり、シンクパールを通じて2009年から子宮頸がんの啓発を続けてきた。

シンクパール 代表理事 難波美智代氏(出所:がん対策推進企業アクション)
シンクパール 代表理事 難波美智代氏(出所:がん対策推進企業アクション)
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 日本対がん協会では、コロナ禍のがん検診の課題を解決する上で、3密を避ける予約システムの普及、効果的な受診勧奨、がん検診の優先度を挙げるための正しい情報の啓発がポイントとしている。難波氏は「とはいえ外出が難しい状況が続く。そこで女性特有の健康課題を解決する手立てとして、フェムテックの活用に注目が集まっている」と語った。

「フェムテックはコスト、スピードなど従来の課題を解決する糸口に」

 日本では2020年がフェムテック元年と言われている。2020年12月時点で国内に97のサービスがあるとされ、その多くはスタートアップである。市場の動向としては、月経、妊娠・産後ケア、更年期・閉経、セクシャルウエルネス、ヘルスケア全般などに大別され、「人口減少・働き手不足による女性活躍支援、SDGsによるジェンダーギャップの解消、医療データ活用に向けた女性のヘルスケアデータのニーズが活性化の後押しをしている」と難波氏は分析する。

 「コロナ禍ではほかの疾患同様、婦人科系疾患でもオンライン診療や未受診者対策としての検査キット利用といった期待が高まっている。フェムテックはコスト、スピードなど従来の課題を解決する糸口となり得るが、安心・安全にソリューションを選択、利用するためには工夫が必要だ」(難波氏)

 難波氏はフェムテック普及に向けた工夫として、「法律・制度の整備、利用者視点や利益に基づいたソリューションの評価が必要」だと話す。法律や制度に関してはフェムテック振興議員連盟の発足、内閣府、厚生労働省、経済産業省でのワーキンググループの設置など具体的な動きが見られる。一方、ソリューションの評価については、科学的エビデンスの確立、サービスそのものの安全性、継続的な供給基盤の確保など、これからの領域だけに解決すべき課題は多い。「まだまだ時間がかかる。市場の発達とともに、法整備と同時進行で成熟していくことが望ましい」(難波氏)。

「がんは十人十色で受け取る印象も様々」

 セミナーでは、がん対策推進企業アクションの認定講師(がん経験者が中心)による声も紹介した。例えば女優・タレントの原千晶氏は次のように話している。

 「子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの患者さんのための患者会『よつばの会』発足から10年。想いを共有し、情報をつなぐ場を作ってきた中で、患者会の役割、SNS、メディアからの情報についてよく考える。治療中の個人の気持ちを伝えることは支えになることもあるが、過剰な感情はミスリードにつながる。科学的根拠に基づいた医療データは重要だが、がんは十人十色で受け取る印象も様々なので、複雑にしないよう整理が必要だと思う」

原千晶氏が寄せた言葉(出所:オンラインセミナーのスライド)
原千晶氏が寄せた言葉(出所:オンラインセミナーのスライド)
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 がん対策推進企業アクションの女性会議である「Working RIBBON(W RIBBON)」は、2021年11月を「W RIBBON月間」と定めた。女性経営者・経営幹部を中心に働く世代の女性のがんを啓発し、予防・早期発見と就労支援の促進に取り組んでいく。

(タイトル部のImage:出所はがん対策推進企業アクション)