湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)が、クラウドファンディングサービスを手掛けるREADYFORと組み、アカデミア研究者の資金調達と研究開発をサポートする新事業を立ち上げた。これまで大学などでの基礎研究の成果がなかなか実用化・製品化に結びつかない「死の谷」が問題視されてきた。今回の取り組みは、従来の科研費、民間VC(ベンチャーキャピタル)投資に加え、市民からという第三の資金調達と、充実した開発環境の提供とを合わせて「谷越え」を支援するもの。第1号プロジェクトとして目標額を達成した北海道大学大学院薬学研究院准教授の山田勇磨氏と、推進役となった湘南アイパークジェネラルマネジャーの藤本利夫氏に話を聞いた。

 新型コロナウイルスの第一波が猛威を振るい始めた3月初旬。山田氏は、READYFORのクラウドファンディングプラットフォームに「副作用の少ない癌治療を、ミトコンドリアに薬を運ぶ技術開発で!」というテーマのプロジェクトページを開設し、支援を呼びかけた。当初は、目標額として650万円を掲げていたが、最終的に総額1000万円の調達に成功した。

がん細胞のミトコンドリアに薬剤を送達するナノカプセル開発

 山田氏が取り組むのは、体内の狙った部位に正確に薬を送り届ける「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」を活用し、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアに薬剤を送り込む技術の開発である。DDSにより、治療効果を最大限に高めながら、副作用は最小限に低減できると期待されている。

 北海道大学で薬学を修めた山田氏は、2002年に研究をスタートさせ、内部に薬剤を封入して、ミトコンドリアの内部まで送達できる「MITO-Porter」(マイトポーター)というナノカプセルの開発に至った。

 一方に、光線力学的療法(PDT)という既存治療があり、腫瘍に親和性の光感受性物質とレーザー光線とを併用して、がん細胞の内部で光化学反応を引き起こし、腫瘍組織を選択的に死滅させようというものだ。山田氏が開発中の治療は、がん細胞のミトコンドリアにMITO-Porterを送り込み、光を与えて破壊する。封入する薬剤もオリジナルで、北海道大学電子科学研究所准教授の髙野勇太氏とともに開発した。

北海道大学大学院薬学研究院准教授の山田氏(写真:本人提供)