声から病気を判別する新技術とは

 ミモシスは音声からストレスを定量化するが、その進化形とも呼べるのが現在開発中の声から病気を判別する新技術「VOISFIA(ボイスフィア)」だ。声を分析することで、うつ病や認知症、パーキンソン病などの病気を見分けることが可能だという。

 「うつ病と認知症とパーキンソン病は、症状がよく似ている。例えば言葉がスムーズに出てこないのは、うつ病で気分がすぐれないからなのか、認知症でもの忘れがあるからなのか、あるいはパーキンソン病で声が出にくいからなのか、医師でも慣れていなければ判別するのは難しい。しかし、独自の音声指標を用いて分析するとそれらには明らかな違いがあり、識別可能なことがわかってきた」(徳野特任教授)

縦軸は音声分析に基づいて、うつ病、パーキンソン病、認知症ごとに開発された試験的指標。横軸は各疾患の重症度を示す。音声分析による指標と疾患の重症度との間には相関が認められる(出所:徳野特任教授)
縦軸は音声分析に基づいて、うつ病、パーキンソン病、認知症ごとに開発された試験的指標。横軸は各疾患の重症度を示す。音声分析による指標と疾患の重症度との間には相関が認められる(出所:徳野特任教授)
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 病気の診断がついている患者に定型文を読んでもらい、声の周波数や特徴量などを独自に解析して、病気ごとの共通点を見つける。認知症にはいろいろなタイプがあるが、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の識別も可能だという。

 「今後は脳血管性認知症と前頭側頭型認知症の判別もできるようにしたい。また、うつ病の場合は大うつ病と双極性障害、非定型うつ病を区別できることも判明した。これからも研究を重ねて精度を高め、ボイスフィアを診断補助ツールとして完成させたい。数年後を目途に医療機器としての認定も目指す。アフターコロナは、遠隔医療やロボットなど非接触技術への需要が今以上に大きくなるだろう。バイオマーカーとしての“声”の出番はますます増えるはずだ」と大塚氏は熱く語る。

 現在、PSTでは医薬品医療機器総合機構(PMDA)とボイスフィアの治験計画について話し合いを進めている。そう遠くない将来、診療の場で血圧や体温などと同じように、声も測る──。そんな光景が当たり前になる日がやって来るのかもしれない。

徳野慎一(とくの・しんいち)
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻
音声病態分析工学講座
特任教授
徳野慎一(とくの・しんいち) 1988年、防衛医科大学校卒業。医学博士。スウェーデン・カロリンスカ大学大学院留学、自衛隊中央病院心臓血管外科、陸上自衛隊師団医務官、防衛医科大学校准教授、陸上自衛隊衛生学校主任教官などを経て、2014年より東京大学医学部付属病院特任准教授。20年から現職。神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーションスクール教授も務める。
大塚寛(おおつか・ひろし)
PST株式会社代表取締役
大塚寛(おおつか・ひろし) 大学卒業後、1995年にスーパーコンピューターメーカーの日本クレイ株式会社入社。2001年、日本SGIと合併。グラフィックスビジネス部長、執行役員戦略事業推進本部長を経て、08年、セグウェイジャパン株式会社代表取締役社長(現会長)。16年、PST株式会社代表取締役。つくば市ロボット特区実証実験推進協議会副会長、アキバロボットポーターサービス実証実験委員、デジタルハリウッド大学院大学非常勤講師も務める。

(タイトル部のImage:patpitchaya -stock.adobe.com)