日経BPは2020年10月14〜16日の3日間、オンラインで「 日経クロスヘルス EXPO 2020」を開催する。このEXPOは、医療・介護・健康といったヘルスケア分野の行政動向や、様々な製品・サービスに関する最新情報を得られる場だ。昨年は東京ビッグサイトで開催したが、今年は新型コロナウイルス感染防止のため、セミナーや展示の全てをオンラインで展開する。

今年のEXPOのメインテーマは新型コロナウイルス感染症対策。新型コロナ禍における医療・介護を取り上げたセミナーが目白押しだ。本連載ではセミナーを中心に、EXPOの見どころを紹介していく。今回は、パネルディスカッション「海外の事例に学ぶ医療の『ニューノーマル』〜働き方を変える産業との共創とは?」を企画しモデレーターも務める東北大学病院特任教授の中川敦寛氏に、本セッションの狙いを聞いた。

 今回企画したパネルディスカッション「海外の事例に学ぶ医療の『ニューノーマル』〜働き方を変える産業との共創とは?」の根底にある問題意識は、VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity;ブーカ)における不確実性をどうコントロールするかです。VUCAの時代、すなわち視界不良時代には、日本人が得意としてきた過去の成功モデルは通用しません。どうやれば勝てるかが分からなくなってしまったから日本は今、苦労しているのだという認識を私は持っています。

東北大学病院の中川敦寛氏

 「人生100年時代」と言われますが、高齢者が増える中、慢性疾患をコントロールしていかに健康寿命を延ばすかが求められています。一方で1960年代に制度設計された現行の医療システムは至るところで制度疲労を起こしており、高齢化がピークを迎える2040年や、その先の2100年まで持続可能な対応ができるとは必ずしも言えない状況です。さらにテクノロジーの進歩が非常に速くなっていて、医療側がそれを十分にキャッチアップできずにいます。つまり今の日本は、自分たちの生き方と、それを支える医療リソース、テクノロジーの進歩を、うまく並び立たせることができずにいるわけです。

 こうしたVUCAの時代に何が求められるのかと言えば、それは「解決すべき課題」を的確に見いだし、そのソリューション(解決策)をデザインできる能力です。今回のパネルディスカッションでは海外の事例を元に、その重要性を示したいと考えています。

 現在、多くの病院では「手術件数をいかにして増やすか」とか「ベッドの回転率をいかにして上げるか」を目標として、スタッフが一生懸命取り組んでいると思いますが、実はやれることはほとんどやりきっている状況なのではないでしょうか。「これまでのやり方とは異なる、何か別の角度や視点から取り組むべき時期に来ているのでは」とうすうす感じながらも、今までの取り組み方の「精度」や「程度」を上げる以外の方向性を見いだせずに頑張らざるを得ない、ということもあるのではないでしょうか。私が医師になってから23年になりますが、こうした状況は基本的には変わっていないのかもしれません。

 ですが、コロナ禍はこれを変える可能性があります。自分たちの生き方と、それを支える医療リソース、テクノロジーの進歩という3つの要素を、いかに並び立たせるのか。この問題を先延ばしせずに、今すぐ解決しろ!と背中を押されているのが、コロナ禍のインパクトだと私は捉えています。

 その解決の鍵となるキーワードが、コ・クリエーション(産業との共創)とデザイン思考です。

 日本の医療現場でも適切な形で産業と協力して、知恵を出し合い、コスト削減のノウハウやヒト、モノ、カネを適切に取り入れることを考えていくべきです。この「適切に」という部分が非常に重要で、それによってレス・イズ・モア(「やることは少なく、でも、得られることが多く豊かである」という考え方)の世界が実現することになります。