出典:「日経バイオテク」2021年10月11日付の記事より

わずか2カ月前の8月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染者は1日当たり2万人を超えていました。それが9月から減少を始め、10月に入ると日本全国の感染者を合計しても1000人を下回る日々が出てきました。ただ、コロナ禍が過ぎ去ったと喜ぶのは早計で、「今こそ感染症に対する危機対応を抜本的に改革する必要がある」と塩崎恭久議員は語ります。今秋に予定されている衆議院選挙には出馬しない塩崎氏ですが、厚生労働行政には並々ならぬ思い入れがあります。

衆議院議員(元厚生労働大臣)
衆議院議員(元厚生労働大臣)
塩崎 恭久 氏

 塩崎氏は愛媛1区選出の衆院議員です(当選9回、うち参院1回)。2014年9月から2017年8月まで厚生労働大臣を務めた他、現在も自民党データヘルス推進特命委員会で委員長を務めています。2000年に起きた「加藤の乱」では、宏池会の会長だった加藤紘一氏が森喜朗内閣の倒閣に動いて失敗しましたが、当時宏池会の若手議員だった塩崎氏は岸田文雄氏や石原伸晃氏らと共に最後まで闘いました。

 その塩崎氏は政界を引退する前に、かつてないほど激しく、政府の医療政策に異を唱えています。例えば、8月2日に厚生労働省が「入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本とする」という方針を打ち出しました。この際、自民党内で明確な形で即刻撤回を求めたのは塩崎氏だけでした。塩崎氏は保健所が地域医療機関などと患者情報を共有し、自宅療養者を医療機関につなぐ「公衆衛生と地域医療の一体化」を図るべきと、かねてより主張してきた経緯があります。

 コロナ禍を通じて塩崎氏が訴え続けているのは、感染症の対策を「平時」から「有事」へ転換しなければならないということ。日本の感染症対応は、旧伝染病予防法の名残があるからか、明治以来一貫して都道府県単位で進められてきました。そのためデータの管理が自治体ごとに異なり(いわゆる個人情報保護法制2000個問題)、国と県そして保健所の指揮命令系統も明確にはなっていません。それでは全世界に感染が広がった今回のようなパンデミックには、到底対応できません。だからこそ塩崎氏は、有事にも対応できるように感染症法を改正しなければならないと考えています。