高血圧を対象にしたワケ

 今回作成したオンライン診療パス試案は高血圧を対象としたもので、目的は心不全のステージの進行抑制だ。なぜ高血圧を選んだのかといえば、日ごろ高血圧診療に当たる中、これだけ患者満足度が低い分野はそうないと思えるからだ。そしてその突破口となるのがオンライン診療だと感じている。

 通常、患者さんは何か困りごとの症状があって、医療機関を受診する。それで医師が不具合を直してくれたら喜び、医師に対して感謝したり笑顔を見せたりする。けれど、別名「サイレントキラー」ともいわれる高血圧は受診動機になる自覚症状がほとんどなく、多くの場合は健康診断などでひっかかって、医療機関にかかる。そこで医師からはときに「なぜここまで放っておいたんだ」と説教される。また、薬を処方されるも、自覚症状自体は何も変わらず、それでも薬を飲み続けなければならない。だから患者満足度が低く、治療を中断してしまうことも起こり得る。

 一方で、医師側も患者が笑顔にならず、そのうち来なくなったりするので、報われない思いが強い。それに診察自体を受けない患者が大勢いることも分かっている。つまり医師の満足度も低い。

 高血圧を放置すれば、将来的に心血管イベントの発現につながり、死亡リスクも高まる。だからこその高血圧治療なのだが、その瞬間は何も困っていない患者に対し、将来ハッピーになるはずといった見えないことを信じさせて、それで5年、10年、20年など長期に渡ってがんばらせるというのは相当難しい。

 とはいえ、そうした難しいことをしっかりやりこなせている医師がいるのもまた事実。生活指導のやり方も薬の使い方にも優れ、患者の満足度が高い。そうした人達のスキルを神業扱いするのではなく、その先生がなんでできているのかということをきちんと解析して、広げていくことが欠かせない。

 国民病でもある高血圧の治療・指導法が医師によって異なり、均てん化されていない、地域差もある状況は問題だ。また、デジタル化が進み、日々の血圧測定が自宅で可能で、投薬により血圧値が安定している高血圧患者の場合、オンライン診療に適している面があるが、現実には昔からの診療体制が続いている。

 本来、患者さんがどこに住んでいても、どんな医師にかかっても、高血圧治療の質は担保されるべきで、そのためにはオンライン診療の環境が今より整備されていて、なおかつ標準治療計画としてパスの存在が求められるのではないか。

 語りたいことはまだたくさんあるが、セッション当日まで取っておきたい。今回、セッションの最後には、各登壇者が来年(1年後)までに目指すべき到達点・目標も示す予定で、私自身、言いっぱなしで終わらせるつもりはなく、日循のフェローとして今後の計画もお伝えする。

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(タイトル部のImage:岸氏作成の「オンライン診療パス試案」)