1食100円の総菜をオフィスに届ける事業「オフィスおかん」が人気のOKAN。2014年3月にスタートして5年を迎えたオフィスおかんは、大企業から中小企業まで全国で2000社が導入、月間の納品個数は10万個にもなるという。この2019年7月には、職場環境をハイジーンファクター(健康や労働環境など)から調査し課題を抽出し、対策の優先順位を把握するためのサービス「ハイジ」を開始した。

常時、肉や魚、野菜など20種類程度の総菜を提供するという切り口から見えてきた、企業のあるべき健康経営とは――。食と健康に関する事業を展開し、そして自らも経営者であるCEO(最高経営責任者)の沢木恵太氏に意見と視点を聞いた。

OKANの創業者である沢木恵太氏(写真:筆者が撮影)

「食」という基本ニーズから健康経営へ

オフィスに総菜を届ける「オフィスおかん」は、開始後5年間で約2000社が導入しました。急成長を成し遂げたと言って良いサービスですが、何が支持されたと見ていますか。

沢木 今までどの事業者もうまく満たしていなかったニーズに合致したことだと思います。「ランチ難民」という言葉も出てきているほどに食事に困るオフィス街があります。建築・土木など、勤務先が一定期間おきに変わる業種・業務の方々にとっては、慣れない土地でどうやってランチを済ませるかという課題もあります。空港やアミューズメント施設などでは勤務シフトや職場環境の都合で、外に買いにいったり外食に出たりするのが難しいケースも多々あります。

 食事は、人間の健康を保つための、基本的かつ重要な活動です。また、栄養面はもちろん、味の面でも満たされるかどうかが重要です。社員の食事という面で考えると、従来は社員食堂が食に関するサポート役だったと思いますが、一部の企業以外は、社食を持つことはなかなか難しいのが現状です。

 オフィスおかんの総菜は、長期保存が可能なパックに詰めてオフィスに届けられ、冷蔵庫に保存しておきます。レンジで温めれば素早く食事がとれる。オフィスおかんのこうした機能性を、ユーザーが理解してくださった結果であろうと思います。

沢木さんは、事業の可能性を探っている中で、元同僚から添加物を抑えたまま食品を長期に保存できる技術に出合ったそうですね。それも大きかったのでしょうね。

沢木 はい。やはり食という対象の性質上、保存性は非常に重要です。当社が採用した技術は、そのうえで味の質も保てます。

 私自身、過去に食生活の乱れなどで体調を崩したことがあり、食事の重要性に関心を寄せていました。具現化する技術、私自身の体験、そして市場ニーズがうまくマッチしたというのは大きいと思います。

 オフィスおかんの総菜は、製造を担っているパートナー企業と一緒にメニューを考案していて、社員の管理栄養士が監修しながら、各地の旬な食材を使用しています。食品添加物は日本では約1500種類が認可されていますが、製造するうえで必要最小限の30種類に限定しています。また、飽きないように毎月少しずつメニューを入れ替えてもいます。

オフィスおかんは専用の冷蔵庫、資材などを入れるボックス、料金箱をオフィス内に設置し、定期的にOKANのスタッフが届ける。電子レンジはユーザー企業が自社で用意する。スタッフによる配送に対応している地域は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県。他の地域はクール便による輸送で対応する。10月24日からは利用頻度の高い企業や、多事業所で展開する企業向けに「エンタープライズプラン」を提供開始。東京地下鉄(東京メトロ)が採用し、約200カ所の職場に導入するという(写真:筆者が撮影)

近年、健康経営が少しずつ注目を浴びています。経済産業省による「ホワイト500」を取得しようとする企業も増えています。その観点からオフィスおかんを導入した企業もあるのでしょうか。

沢木 はい、「従業員が日々食べている食事の質が悪い」という理由でオフィスおかんを導入した、とおっしゃるユーザー企業も多くいらっしゃいます。ホワイト500の認定取得にあたっては、従業員の食生活の改善に向けた取り組みも評価されますので。

 ただ、全体的な傾向としましては、健康経営というよりは福利厚生の充実、特に利便性と経済性に着目して導入を決めたユーザー企業が多いですね。オフィスに届けられるので社員は外出する必要がありません。また、1食当たり100円ですので、特に外食と比べれば安く済ませることが可能です。

 オフィスおかんを提供する中で得た感想ですが、健康経営は、企業側が社員に無理やり押し付ける形ではなかなか進まない、ということです。オフィスおかんを導入してくださっているユーザー企業を見ていると、「健康経営を一番の目的にしていたわけではないが、自然と社員が健康を意識するようになった」という声をしばしば頂戴します。

 あるユーザー企業からは「以前はオフィスおかんで肉の総菜ばかり売れていたのが、最近はお魚中心になった」といったお話をいただきました。健康的な食事というものを一般化することは難しいですが、肉中心の欧米系の料理よりも、魚中心の日本食のほうがヘルシーであると言われています。そのため、これはオフィスおかんの導入を通じて、社員が健康的な食事というキーワードに関心を持つようになった結果だと考えられます。

社員に健康になってほしいと言っても、運動嫌いの社員にいきなり運動させるのはなかなか難しいです。

沢木 もちろんそうした施策も重要だと思います。けれども、今よく話題になる健康経営をうたったサービスは、社員にとってハードルが高すぎるものになっていないかな、と感じます。

 ハードルが高ければ高いほど、社員のやる気が必要です。もともと健康への関心が高い社員は別として、やはり長続きはしないでしょう。それに、生活習慣病およびその予備軍と言われる社員ほど、「やってくれ」と会社側から頼んでも、なかなかやらないものではないでしょうか。生身の人間である以上、そうした傾向はある程度仕方がないことです。