視神経の障害に起因する緑内障は、視野障害をきたす代表的な疾患である。気づかないうちに病状が進行し、運転中に信号を見落としたり、飛び出しに気づかなかったりして事故に発展する可能性があるという。手術などによる完治ができない疾患だけに早期発見が重要だ。

 2020年の交通事故死者数は2839人と、警察庁が統計を開始して以来、最小を記録した。衝突被害軽減ブレーキなどの安全運転支援機能の搭載車両も増えており、交通事故のさらなる減少にも期待がかかる。

 一方で、安全運転の妨げになる要因についての研究も進んでいる。健康面については高齢者の認知機能や身体機能の低下がよく知られるところだが、「自分はまだ大丈夫」と思っている年代でも緑内障や色素網膜変性症などによる視野障害が起きているケースがある。

 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム第2期自動運転(SIP-adus)では視野障害をテーマにウェビナーなどを開催して啓発に努めている。2021年10月19日と20日には自動運転の実証実験を行っている東京都江東区にて自動運転車両の試乗会を開催し、その会場内では、西葛西・井上眼科病院(東京都江戸川区)の協力のもと、視野障害を体験できるドライビングシミュレータを用意していた。

視野障害を疑似体験できるドライビングシミュレータに挑戦。視野の周辺が見えにくくなっており、左前方の側道から白い軽トラックが出てきていることにまったく気付けなかった(撮影:サイエンスデザイン)
視野障害を疑似体験できるドライビングシミュレータに挑戦。視野の周辺が見えにくくなっており、左前方の側道から白い軽トラックが出てきていることにまったく気付けなかった(撮影:サイエンスデザイン)
[画像のクリックで別ページへ]

 筆者も試乗会に参加し、視野障害(求心性視野狭窄)を疑似体験できる特殊なメガネを装着してシミュレータに挑戦した。視野の周辺が全体的に見えにくくなるよう設定されていて、普段と比べてだいぶ見えている世界が小さく感じる。

 シミュレーションの舞台はごく一般的な市街地だ。アクセルペダルを踏むと一定速で走る仕組みになっており、ハンドルとブレーキペダルはあるが、真っすぐな道なので、ハンドル操作は不要で、あぶないと思ったときにブレーキペダルを踏むように指示された。天候は晴れ。視界は本来良好なはずだが、メガネのせいでとにかく見えづらい。約5分間のプログラムには15回のヒヤリハット(交通事故の起こりそうなシチュエーション)が用意されているのだが、そのうち12回は事故を回避することができなかった。