事業の鍵を握る「コミュニティ」の構築

 ライフサイエンスのプレーヤーを集めることができた一番のポイントは、企業・団体同士の「コミュニティ」構築を伴ったことだ。同社ライフサイエンス・イノベーション推進事業では、(1)「場」の整備と、(2)「資金」の提供に加え、(3)「コミュニティ」の構築を事業の推進エンジンと位置付けている(下図)。(3)の役割は、ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)が担っている。

 LINK-Jは2016年3月、三井不動産と産学の有志が中心になって立ち上げられた一般社団法人。日本橋エリアを拠点として、産官学連携によるライフサイエンスのオープンイノベーションを促進し、新産業の創造を支援することを目的としてつくられた。LINK-Jに参加している企業・団体・個人は2021年11月現在、497に上る。冒頭紹介した15拠点にオフィスを置く企業や団体はLINK-J特別会員である。

 LINK-Jが提供するのは、ライフサイエンス領域のプレーヤーの「交流・連携」を目的としたイベントや、「育成・支援」を目的としたプログラムの企画・運営である。イベントについて言えば、2021年こそオンライン開催が中心だったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まる前は、リアルな場でのイベントが1日1回以上開催され、会員のネットワークづくりが活性化していた。イベントや交流における集まりやすさも、日本橋の活況につながったわけだ。

 取り組みの成果として、日本橋発の有力スタートアップも生まれてきている。例えば、2017年5月に日本橋で創業したヘルステック企業のUbie(ユビー)。同社は、医療機関向け人工知能による問診システム「ユビーAI問診」や、一般ユーザー向けの受診相談アプリ「ユビーAI受診相談」などを提供している。LINK-Jが提供する育成・支援プログラムの参加企業で、本社オフィスは現在も、「15拠点」の1つに置いている。

ライフサイエンス・イノベーション推進事業の骨子。三井不動産は「場」の整備と「資金」の提供を手掛け、LINK-Jは「コミュニティ」の構築を担う
ライフサイエンス・イノベーション推進事業の骨子。三井不動産は「場」の整備と「資金」の提供を手掛け、LINK-Jは「コミュニティ」の構築を担う
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三井不動産ライフサイエンス・イノベーション推進部長の三枝寛氏とLINK-Jプロデューサーの境夢見氏
三井不動産ライフサイエンス・イノベーション推進部長の三枝寛氏とLINK-Jプロデューサーの境夢見氏
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