幅広いネットワークによるオープンイノベーション

 LINK‐Jについて、もう少し詳しく見ていこう。LINK-J事務局長を兼務する三枝氏は「ライフサイエンス分野でオープンイノベーションを目的に集う『コミュニティ』はこれまでなかった。LINK-Jではそうした『コミュニティ』を構築できている。会員数は500程度だが、情報発信用メーリングリストの登録者は桁違いに多く、海外の学界や団体ともネットワークを結んでいる」と胸を張る。

 今は勧誘なしに会員が入会している状況。「LINK-Jの立ち上げ2年目から、『コミュニティ』の持続性に自信を深めた」(三枝氏)。

 そのことは、イベントの主催者にも表れている。例えば2020年の1年間で実施されたイベントは357あるが、LINK-J主催・共催のものは56にすぎない。イベントの多くは会員主催で240。それに次ぐのがLINK-J協賛・協力で61を数える。つまり、イベントの8割超は「コミュニティ」側から自発的に実施されているものだ。

 LINK-Jが主催共催するイベントの多くは、LINK-J側への相談というアプローチから開催に向けて動き出す。プロデューサーを務める境夢見氏は「LINK-Jにイベントの企画を持ち込めば、多岐にわたる『コミュニティ』に情報発信してもらえるという期待を持っていただいている。今では良いイベント案があれば、まず事務局に相談してみよう、という理解が広まっている」と説明する。

 境氏の所属母体は、事務局長の三枝氏同様、三井不動産ライフサイエンス・イノベーション推進部となる。しかし同社にもともとライフサイエンス分野の産業創造に向けたノウハウがあったかと言えば、決してそうではない。

 三枝氏は「『コミュニティ』の構築には、LINK-Jの立ち上げ当初から苦労を重ねてきた」と明かす。それでもここまで実績を築くことができたポイントは、ベンチャーの育成・支援を直接、手掛けようとしてこなかった点にあると言う。

 「私たちの取り組みは、育成・支援そのものをビジネスとするVCなどを応援するものという位置付け。だから、他社と競合しない。むしろ、応援する存在と捉えてもらうことができた。その結果、スタートアップの育成・支援に向けたノウハウを持つVCなどとも協業することができた」(三枝氏)。

 「コミュニティ」の構築でLINK-Jの事務局が心掛けているのは、気軽にネットワークを築くための「楽しさ」の演出だ。境氏は「日本人はパーティーで交流を図るにも苦手意識を持たれる方が多い印象があるからこそ、雰囲気づくりには気を配る。著名な登壇者によるシンポジウムでも、気軽で楽しい雰囲気は忘れないようにしている」と話す。

LINK‐Jが行ったイベント例。2020年の開催実績は357件(オンラインは218件)で、2021年はオンラインに注力してきた
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LINK‐Jが行ったイベント例。2020年の開催実績は357件(オンラインは218件)で、2021年はオンラインに注力してきた
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LINK‐Jが行ったイベント例。2020年の開催実績は357件(オンラインは218件)で、2021年はオンラインに注力してきた