「ラボ&オフィス」は、日本でもビジネスに

 三井不動産のライフサイエンス事業の歩みをビジネスという視点で振り返ると、大きく2度の転換点があったと言う。

 最初は、企業・団体の活動拠点になる「場」を整備し始め、1棟目のビルを供給し終えた段階だ。「最初の拠点ビルは、テナントの誘致も賃料設定を含め、探り探りの状態だった。ところが、一定の手応えを得られLINK-Jの活動も活性化し始めたことから、2棟目以降は相場賃料で貸し出す方針が定まった」(三枝氏)。三井不動産ではここで手応えを得られたからこそ、「場」の整備に弾みを付けることを決めたと言う。

 次は、整備する「場」として「賃貸ラボ&オフィス」と呼ばれる施設を加えた段階だ。この施設は、創薬や再生医療等の研究者が実験を行う、いわゆるウエットラボ仕様を備えた賃貸オフィス。貸し出す区画単位で、給排水、吸排気、都市ガスなどの配管が事前に整備されている。2020年1月には東京・葛西に第一号「三井リンクラボ葛西」を、翌2021年3月には東京・新木場に第二号「三井リンクラボ新木場1」を立て続けに完成させた(下写真)。新木場では、2023年春完成予定で2棟目の施設を計画中だ。

 賃貸ラボ&オフィスの整備のきっかけは、LINK-J会員からの要望だ。「賃貸ラボがほしいという声が上がったが、支払える賃料には限界がある。そこで、日本橋には近いものの賃料水準は都心に比べ抑えられる葛西や新木場という都心近接地に物件を確保した。葛西では第一三共葛西研究開発センター内の一部を賃借し、リノベーション工事を施した上で転貸している。新木場では専用のビルを新しく建設した上で貸し出している。

 入居率は、例えば「三井リンクラボ新木場1」の場合、賃貸借契約締結までの目途が立っているものも含め、8割強。入居済みのテナントには、異業種からの参入企業・団体、開発業務受託機関とも言われるCRO、スタートアップが顔を揃える。「反響は想定以上。入居しているテナントは狙い通りの顔ぶれだ」(三枝氏)。

 三井不動産にとってこの「賃貸ラボ&オフィス」は、「オフィス」「住宅」「商業」「ホテル・リゾート」「物流」に続く、6番目のアセットクラスと位置付けるほど、大きな期待を寄せるもの。開発が先行する米国の現況を踏まえ、満を持して事業化に乗り出した。米国の現況を、三枝氏はこう説明する。

 「米国でもかつて研究所は郊外に自前で持つのが主流だったが、今はオープンイノベーションの機会を確保するため、都心により近い場所が好まれる。また環境変化に迅速に対応する必要から、保有から賃借という流れもある。研究所の状況はこの20年で大きく変わった。ボストンのケンブリッジエリアは『ラボ銀座』と呼ばれるほど。賃貸施設に名だたる企業が入居する。その様子を目の当たりにし、これは日本でもビジネスになる、と踏んだ」

 「賃貸ラボ&オフィス」では今、葛西や新木場のような都心近接型に加え、アカデミアなどの近接地に立地するシーズ近接型も展開する。第一号は、三井不動産がスマートシティとして街づくりに取り組む千葉・柏の葉。国立がん研究センター東病院の隣接地に目下、建設中だ。完成は2021年11月を見込む。

 また米国ボストンにも進出する。米国子会社を通じ、地元のデベロッパーと組み、2021年冬を目途に施設を完成させる。今後、カリフォルニア州のサンディエゴやサンフランシスコでも「賃貸ラボ&オフィス」を展開する予定だ。

2021年7月、初の新築賃貸ラボ&オフィスとして開業した「三井リンクラボ新木場1」。新木場エリアでは2棟目の建設計画もある
[画像のクリックで別ページへ]
2021年7月、初の新築賃貸ラボ&オフィスとして開業した「三井リンクラボ新木場1」。新木場エリアでは2棟目の建設計画もある
[画像のクリックで別ページへ]
2021年7月、初の新築賃貸ラボ&オフィスとして開業した「三井リンクラボ新木場1」。新木場エリアでは2棟目の建設計画もある
[画像のクリックで別ページへ]
2021年7月、初の新築賃貸ラボ&オフィスとして開業した「三井リンクラボ新木場1」。新木場エリアでは2棟目の建設計画もある
初の海外賃貸ラボ&オフィスとなるボストン「イノベーションスクエアPhaseⅡ(仮)」
初の海外賃貸ラボ&オフィスとなるボストン「イノベーションスクエアPhaseⅡ(仮)」
[画像のクリックで別ページへ]