利用者の近くにあるからこその実証施設

 介護・看護が必要な方々のためのロボットの開発はこれまでも様々な機関が取り組んできたし、今現在も盛んに行われている。本当に使いやすいロボットに仕上げるために、是非とも必要なのが実証実験だ。ところがここがネックとなり尻つぼみになるプロジェクトも少なくないという。

 「できあがったものを若年の健常者が要介護者の気持ちになって試したり、よくても高齢の健常者が試したりといった実証実験が多い。真のユーザーに試してもらう前に終わってしまうということです。それではいつまでたっても本当に必要なものを生み出すことはできない。

 このような問題を解決するため、我々は2017年に病院に近接するUR豊明団地の中に戸建てのロボティックスマートホームの実証施設を整備しました。さらに、2018年には病院内にも研究センターを造り、高齢者や患者さんなど実際に介護の手助けが必要な方に使ってもらうことで本当に必要な機能を研究しているのです」

 上記のように、現在ロボティックスマートホームは病院内と団地の一画にそれぞれ1つずつ設置されている。病院内の施設では研究・開発に力点を置き、ここで一定以上の機能が確認されれば、団地にある施設で使ってみるといった二段構えの構造だ。

豊明団地内のロボティックスマートホーム(出所:藤田医科大学)

 「豊明団地には65歳以上の住人が1000人以上暮らしています。そのうち独居は約300世帯。病院で待つだけでなく、こちらからユーザーさんに近づいて、気軽に体験してもらい、そこからの意見を研究・開発にフィードバックする。おかげで我々の研究から生まれた介護・医療機器は本当の意味で痒いところに手の届くものになっているのだと思っています」

 藤田医科大学は組織の中に地域の医療や介護に関する問題に対処するための「地域包括ケア中核センター」を持っている。ここをハブとして、訪問看護や訪問リハビリの提供なども担う。

 そうした取り組みをより血の通ったものにするため、教員や学生が近接する豊明団地に住み、地域と交流しながら親睦を深めている。団地の中に誰もが医療相談を受けることができる「まちかど保健室」を設置し、定期的に健康講座を開催するなどの地域貢献も活発だ。

 「そうした現場から吸い上げる医療ニーズも、もちろん研究に役立てています」