訪問介護や訪問看護など在宅介護の支援や介護施設の運営、また介護用品の販売など、シニアライフの支援に早くから取り組んでいるパナソニック。同社は、自立支援型デイサービスで知られるポラリスと手を結び、新たなビジネスに乗り出した。今後さらに問題となってくるであろう介護の需給ギャップ解消を目指した取り組みを聞いた。
パナソニックはご存じの通り、テクノロジーの分野で日本を牽引してきた企業である。また、早くから介護の分野に乗り出し、存在感を示してきた会社でもある。同社の介護分野での新規事業として掲げるテーマは「スマートエイジング」だ。
介護分野において、IoT・AIを活用し、科学的エビデンスに基づく自立支援介護の実現を目指し、高齢者を元気にしていく。これが「スマートエイジング」の中身だ。
パナソニック スマートエイジングケアプロジェクトの大西聡明氏はこう語る。
「現在、日本には211万人の介護人材が活躍しています。ただ今後も高齢化が進んでいくなかで、2040年には69万人の需給ギャップが出てくると推計されている。今後は少子化も進むことから、労働人口が下がる。しかし医療・介護の需要は伸びていきます。需給のギャップが現れるのは当然のことなのです」
20年後には1000万人以上の福祉・医療の職員が必要
厚生労働省が出した試算では、日本の生産年齢人口は2017年の時点で6530万人に対し、団塊の世代が後期高齢者となる2025年の時点で6082万人、さらに、団塊ジュニアが65歳以上になる2040年にはわずか5245万人にまで減少するとしている。
この時に必要な介護職員の数は280万人。ただこれは介護職員だけの数字だ。医療福祉の分野で必要とされる数字を合わせると、1060万人の人がこの分野で働いていなければ需給のギャップを埋めることができないと試算されている。
「つまり、今から20年後には生産人口の約19%、5人に1人が医療や介護の分野で働かなければ日本の福祉は回らないという計算になる。正直、そうした未来が実現するのは難しいように感じます」(大西氏)
そこで出てくるのが、需給量のアップもさることながら、供給量にアクセスするという考え方だ。介護・医療の分野でいう供給量とは、もちろん医療や介護のサービスを使う人ということになる。これを減らすことができれば需給ギャップを埋めることに繋がる。
「もちろん、介護・医療の分野で活躍する人を増やしていくことは大切です。さらに、サービスに頼る人を減らす。その両面から我々は着目しているということです」(大西氏)