「箱モノを作るのは簡単だけど、人を創るのは難しいし時間もかかる」──そう語るのは神奈川県立保健福祉大学の中村丁次学長だ。2003年に開校した同大学は地域との交流が盛んだ。そこから教育、研究、地域貢献という大学の負う役割の好循環が生まれている。同大学の具体的な取り組みとは?

神奈川県立保健福祉大学学長の中村丁次氏(写真:末並 俊司)
神奈川県立保健福祉大学学長の中村丁次氏(写真:末並 俊司)
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 高度成長期、都市部への人口集中が進んだことで、住宅不足が問題化した。これを解消するために、各地に大規模な団地が整備され、人々の暮らしを支えた。それから半世紀が経過し、建物も住民も歳をとった。空き家の増加傾向にも歯止めがかからない。

 そうした団地に若者を呼び寄せ、地域と交流を持つことで様々な効果が生まれている例がある。神奈川県内に1万4000戸の賃貸住宅を管理する神奈川県住宅供給公社は早くから運営の見直しに取り組み、地域の活性化を成功させている。その1つが地元大学との連携だ。

 神奈川県横須賀市にある浦賀団地(神奈川県横須賀市浦上台)は1970年着工の物件群だ。築年数が古く、エレベータの設置が遅れているため、4、5階の空き家が目立った。そこで2016年に住宅供給公社と神奈川県立保健福祉大学が連携協定を締結し、同大学の学生が「団地活性サポーター」として入居し、地域の活性化をサポートするという取り組みが始まった。

 同大学の中村丁次学長が語る。

 「部屋は2DKの立派なつくりで、家賃は月額2万1450~2万2350円と格安です。ただし、学生が入居できるのはエレベータ無しの4階と5階限定です。それでも学生は足腰がしっかりしているから大丈夫。また入居する学生は、浦賀団地の自治会への加入が条件。地域コミュニティの活性化を目指した活動に参加することも求められます」

 いろいろと条件があるようだが、学生からも団地側からもこの取り組みは好評だ。