大腸がんの進行段階で、増える腸内細菌の種類が異なる

 研究の対象となったのは、国立がん研究センター中央病院で大腸内視鏡検査を受けた616人。内訳は、大腸がんと診断された患者365人と大腸がんではないと診断された健常者251人。ヒトの腸内細菌の研究でこれだけの規模のものは他に類を見ないという。全員が大腸内視鏡検査に加え、食事など475項目にわたる詳細な生活習慣アンケートにも回答。さらに、採取した凍結便を次世代シーケンサーでメタゲノム解析を行った。

 その結果、大腸がんの進行段階によって腸内に増える細菌が異なることが判明した。「これまでの研究では、フソバクテリウム・ヌクレアタムやペプトストレプトコッカス・ストマティス(Peptostreptococcus stomatis)などの嫌気性菌が増えることがわかっていたが、これらはどれも進行大腸がんで増加する腸内細菌。今回の我々の研究では、進行がんではなく、前がん病変である多発腺腫(ポリープ)やごく初期の粘膜内がん(ステージ0)でのみ増える細菌が初めて明らかになった」(谷内田教授)。

 その細菌がアトポビウム・パルブルム(Atopobium parvulum)とアクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)だ。もともと口の中に多く存在する細菌だという。下のグラフのように、アトポビウム・パルブルムは多発腺腫と粘膜内がんの段階で健康な人よりも明らかに増えている。アクチノマイセス・オドントリティカスは粘膜内がんで増加している。これらの細菌は大腸がんが進行すると減少しており、超早期にのみ増える細菌だということもわかった。

発がん早期でのみ増える腸内細菌が判明
健常者、多発腺腫、粘膜内がん(ステージ0)、大腸がんステージⅠ・Ⅱ、ステージⅢ・Ⅳの患者、合計616人の凍結便に含まれる細菌をメタゲノム解析で調べた。その結果、前がん病変である多発腺腫ではアトポビウム・パルブルムが、粘膜内がんではアトポビウム・パルブルムとアクチノマイセス・オドントリティカスが統計学上有意に増加していた。これらは大腸がんが進行すると減少に転じた。+印は統計学的な有意差を表す(谷内田教授の資料を基にBeyond Healthが作成)

 「進行大腸がんになるとフソバクテリウム・ヌクレアタムなどの嫌気性菌が爆発的に増加するため、アトポビウム・パルブルムなどの細菌は生息しづらい腸内環境になるのだろう」と谷内田教授は推測する。他にも善玉菌として知られるビフィズス菌も粘膜内がんの段階で減少。また、大腸炎などを抑える有用物質として近年注目されている酪酸を産生する細菌も、粘膜内がんの段階から進行大腸がんに至るまで減っていたという。大腸がんの進行に伴って腸内環境が悪化していくわけだ。