人の足元を見るプロジェクト

 田村さんが説明する。

 「我々は毎日のように同じ場所を走っているわけですから、ちょっとした異変に気がつきやすい。毎日この場所で見かけるおじさん、今日はいないなとか、これまで私も業務中に、酔っ払って畑にうつ伏せて寝ている人を救助したこともあります」

 しかし、認知症のために迷子になった人がいたとして、素人にそれを見分けることが可能なのだろうか?

ステイゴールドカンパニー代表の横木淳平さん(写真:末並 俊司)
ステイゴールドカンパニー代表の横木淳平さん(写真:末並 俊司)
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 「ちょっとしたコツさえ掴めば簡単なんです」

 そう語るのは前出の横木淳平さんだ。そもそも横木さんは長く介護施設に勤務し、その後栃木県の下野市に介護付き有料老人ホーム「あらた」を立ち上げた人物だ。認知症についてのエキスパートである。

 「まず足元を見るんです」

 どういうことなのだろうか。

 「今年のはじめに飲食関係の仕事をしている知人と『職業病ってあるよね』みたいな話をする機会があって、そのときに、『僕は、街を歩いてるお年寄りの履き物をみちゃうんですよね』という話をしたんです。室内用のスリッパのまま道路を歩いているとか、裸足ででかけているとか、そうしたお年寄りってかなり高い確率で認知症を患っているんです」(横木さん)

 履き物と認知症、その関係を横木さんは次のように解説する。

 「散歩、買い物、人は出かけるときに、TPOに応じた履き物を選びます。ところが認知症が悪化するとそうしたところに斟酌できなくなってしまいがちです。まず『出かけたい』という気持ちが先にたち、履き物をTPOに合わせるところまで気がまらないのです」(横木さん)

 室内用のスリッパで表を歩いている。雪が降っているのにサンダルで出かけている。左右違う靴。裸足まま歩いている、など足元が「ちょっと変だな」と感じられる高齢者に声をかけて、受け答えがチグハグな場合は役所の高齢福祉課に連絡を入れて保護を依頼する。

 人の足元を見る──この方法で横木さんはこれまで何人もの認知症患者を保護した経験があるという。