医療の未来を変える研究が続々、歯の再生から超聴診器まで

 セミナーに登壇したのは順に、トレジェムバイオファーマ、Photo Soni Life Technology、HiLung、AMIの4社。最後のAMIを除く3社は2020年に創業したばかりの生まれたてのスタートアップである。

 1社目のトレジェムバイオファーマは、歯数制御による歯の再生治療薬の開発に挑む。代表取締役を務める喜早ほのか氏は現役の歯科医であり、京都大学医学研究科口腔外科学分野の髙橋克准教授のもと、2008年から歯の再生研究グループで研究を重ねてきた。

トレジェムバイオファーマ 代表取締役 喜早ほのか氏(オンラインセミナーのキャプチャー、以下同)

 同社では、永久歯の次に生える「第3生歯」を作ることで、虫歯や歯周病などによる欠損歯の新たな治療法を確立することを目指している。「ただし、いきなりそこに行き着くのはハードルが高い。そこで、小児疾患の先天性無歯症をターゲットに研究を進めている」(喜早氏)。先天性無歯症は永久歯胚が育たない症状で、現状では義歯の補綴(ほてつ)による治療法しかない。そのため未成年期の栄養確保や成長阻害要因となっており、治療薬が望まれている。

 長年の研究成果で見出したのが、抗USAG-1抗体によってBMPとWntシグナルを増強させ、永久歯胚あるいは第3歯堤から歯の発生を推進させる方法だ。「すでにEDA遺伝子欠損マウスに中和抗体を1回投与し、無歯症が回復することを確認できている。さらに、よりヒトに近い犬、フェレットでも歯が生えることを確認した」(喜早氏)。これを受け、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の難治性疾患実用化研究事業にも採択された。

 短期的なゴールは治療薬となるヒト化抗USAG-1抗体製剤の開発だ。早ければ2030年には先天性無歯症向けに上市したいとしている。その後、2号パイプラインとして部分無歯症向け、3号パイプラインとして後天性の欠損歯の治療薬に適用したい構えだ。喜早氏は「3号パイプラインまで到達すれば、歯科医療を変える可能性がある」と結んだ。

 2社目のPhoto Soni Life Technologyは、光超音波イメージング技術の社会実装を目指す。京都大学大学院医学研究科の椎名毅教授の研究をベースにしたもので、「第4回京都大学インキュベーションプログラム」に採択されている。

 代表取締役の若松知哉氏は「光超音波イメージングは、外部から皮膚への影響を与えない程度のパルスレーザーを照射し、内部から発生する超音波を読み取って可視化する技術」と説明する。同社ではこの技術を応用し、光超音波顕微鏡などを開発している。

Photo Soni Life Technology 代表取締役 若松知哉氏

 「生体のイメージング装置は、これまでさまざまなものが開発されてきた。しかし、X線やMRI装置はコストに加え測定時間がかかり、被ばく、あるいは造影剤といった人体への影響も懸念されている。その点、光超音波イメージングは非侵襲かつ高分解能で到達深度も深いことが特徴。血中酸素飽和度といった機能情報など生体情報の可視化もできる。この技術を使えば血管の異常、あるいは血中の成分といったバイオマーカーをモニタリングして、がんやリウマチ、動脈硬化や脳卒中といった疾患を対象にした予防、早期診断、治療の支援に役立てられる」(若松氏)

 若松氏は臨床向け装置として、関節リウマチ向けデバイスの試作品を紹介した。「微細な血管を三次元的に定量的に捉え、血中酸素飽和度による評価も可能。比較的早期に病状を評価できる可能性が出てくる」(若松氏)。高解像度・高機能・小型を強みとしており、「将来的に医療機器としての販売を視野に入れている」と語った。