県外の企業を支援し、県内の企業に気付きを与える

 トータルウエルネスプロジェクトオキナワが健康経営支援の対象とするのは、沖縄県外の企業だけではない。当然のことながら、沖縄県内の企業にも目を向けている。実は、そこには深刻な事情がある。

 2015年の厚生労働省の調査によれば、沖縄県の平均寿命は全国で女性7位、男性36位。とりわけ、働き盛り世代の死亡率が全国と比較して高く、定期健康診断で何らかの異常所見が見つかる労働者の割合を示す有所見率も2018年で66.7%と、8年連続で全国最悪を記録する。原因は、「特に働き盛り世代で顕著な食の欧米化と、自動車通勤が多いなどの運動不足にある」(菊池氏)という。今なお全国でトップクラスの平均寿命を誇る高齢者世代との世代間二重構造が浮き彫りとなっているのだ。

 こうした事態を重く見た沖縄県は2014年に「健康おきなわ21(第2次)~健康・長寿おきなわ復活プラン~」を策定し、「2040年に男女とも平均寿命日本一」を目指して、県民に食生活を見直したり運動量を増やしたりするよう呼びかけている。トータルウエルネスプロジェクトオキナワも、沖縄食文化の継承と沖縄食材の消費拡大と並び、健康長寿沖縄の復活をミッションとして掲げ、那覇市や琉球大学経営学教授などと連携しながら、前述したウエルネスプログラムやセミナー、ワークショップなどを実施する「働き盛り世代向け」健康プロデュース事業「オウラボ(Okinawa Well-being LAB)」を展開している。

 菊池氏は、沖縄県の企業に対し、沖縄県外の企業の取り組みを見てもらうことで健康経営に関心を持ってほしいという。「以前、読谷村の我々のスタジオを訪ねてきた外国人が、沖縄の健康や長寿について詳しく聞いてきた。そのとき、沖縄県内の人よりも沖縄県外の人の方が、沖縄の健康や長寿に対して高い関心を持っていることに気付かされた。そうであれば、まずは沖縄の食などを沖縄県外に向けて発信し、関心を持った企業や人を沖縄県に呼び込む。それを沖縄県内の企業が間近で見て、沖縄の食の良さなどに改めて気付いてもらい、健康経営に舵を切ってもらえればいい」と考えたのである。

 それだけではない。菊池氏は、海外にも目を向ける。その視線の先にあるのは、肥満や糖尿病が多く沖縄と同様の健康課題を抱えるフィジーやサモア、トンガなどのオセアニア地域だ。2019年1月と10月にはJICA(国際協力機構)を通じて、同地域の政府職員である栄養士や保健師、看護師などの研修生を受け入れ、生活習慣予防研修を実施した。沖縄の食で世界の健康に貢献する──。菊池氏らの挑戦は始まったばかりだ。

沖縄と同様の健康課題を抱えるオセアニア地域も健康にしたいと、菊池氏らは世界にも目を向ける(写真:新関 雅士)

(タイトル部のImage:トータルウエルネスプロジェクトオキナワ)