産学連携で短時間、低コストを実現

 実はこのプロテオミクスの考え方自体は、生化学領域ではすでによく知られているアイデアだ。生体を知る一つの有用な方法であると目されていたにも関わらず、医学や健康分野等への応用がこれまで進んでこなかったのは、プロファイリングに時間もコストもかかる上、再現性ある方法が確立されていなかったからだ。

 「そこに汎用化への突破口を開いたのが、東工大 生命理工学院の林宣宏准教授です。林准教授はプロテオミクスのデータを簡便に取得する技術を開発し、コストは従来の約100分の1、時間も約5分の1まで圧縮することに成功しました。再現性も高く、今までごく限られた施設でしかできなかった技術が、より多くの場所で、短時間かつ低コストでできるようになったのです」(馬渕社長)。

図1●プロテオミクスのデータ取得の流れ
プロテオミクスの従来の技術は電気泳動法といい、血清からたんぱく質部分を分離後、それを26cm×20㎝の水槽のような装置に入れて分析する方法だ。林准教授はその装置を小型化(8㎝×8㎝)するとともに、各検体に特化した前処理法を検討し、高品質の画像データを効率よく取得する手法(高性能二次元電気泳動法)を開発した。これにより、分析にかかる時間は1週間から33時間に短縮。再現性や感度も高くなり、今までごく限られた施設でしかできなかった技術が、より多くの場所で、短期間でできるようになった(図中の写真は剣持 悠大)

 2019年4月、aiwellは東工大内に協働研究拠点を設立。林准教授が開発した独自の二次元電気泳動法を用いたプロテオミクス技術にディープラーニングやAIによる機械学習アルゴリズムを導入。多くのデータをAIに読み込ませることで、迅速、高精度かつ汎用性の高い画像判断を可能にした。東工大とaiwellの技術の結晶がAIプロテオミクスだ。

図2●二次元電気泳動画像の一例
敗血症症例30例の罹患時と健常時より採取した血液検体において、プロテオミクス解析を実施して得られた画像。色付けされた部分が敗血症に関わるタンパク質の変化をあらわしている。「ここに変化が認められたら敗血症であり、敗血症になれば誰もが同じ部分が変化した絵になります」(馬渕社長)。林准教授らの研究グループはこの方法で、98.2%の精度で、敗血症患者の的確な診断が可能であることを証明した(出所:aiwell)