創薬コストも大幅削減へ、汎用化の主軸は医療・健康分野

 短時間で高精度に生体のたんぱく質の変化をみつけるAIプロテオミクスは、さまざまな産業での汎用化が期待される。中でも、aiwellが基幹事業として取り組んでいるのが予防医学の分野だ。

 プロテオミクスは図1のとおり、基本的には血液からたんぱく質を分離し、解析する。「血液は、全身をめぐっている間に体のあらゆる情報をレコーディングしています。そして、敗血症には敗血症の、がんにはがんの、という具合に、病気にはそれぞれ特徴的なたんぱく質の変化があり、その変化は我々が自覚する前に始まります。そのため、レコーディングされた情報を画像化し、特定のたんぱく質の変化が見つかれば、例え自覚症状がなくても、生体的にはその病気を発症していることがわかるのです」(馬渕社長)。

 これにより、理論的には「発症前に治療する」ことも可能になるというわけだ。中には未病と呼ばれる、食事や運動、休息等、生活習慣の改善で治ってしまうレベルのものも多いと考えられる。そうなれば、医療費もかからずに、自分の力で治すことができることになる。

 そのステップとして、低侵襲で簡単に血液検査ができるようにする必要があるが、それについては「現在、指先に細い針を指して採血する微量な血液量(20μL)で、プロテオミクスの画像をつくる技術も開発中です」と馬渕社長は話す。病気をスクリーニングするときに、「臓器や部位別にその都度検査を受けるのではなく、たった1回の血液検査で全身の状態がわかるというのも、プロテオミクスの強みになります」。

 馬渕社長は、この技術が創薬の分野でも大きなビジネスになると考えている。というのも、AIプロテオミクスを使うと、創薬にかかる費用が大幅に圧縮可能となるからだ。

図3●創薬の開発費用に関する軽減の試算
左端の棒グラフが現在の新薬開発費用総額と内訳、右はプロテオミクスを使った場合の試算。現在は半分以上をバイオマーカーの探索が占めているが、プロテオミクスの導入でバイオマーカーの候補の絞り込みが容易になれば、半額以下まで圧縮できる可能性も(出所:aiwell)

 現在の新薬開発では、病気と関連の強いたんぱく質(バイオマーカー)の「仮説」と「検証」を繰り返しながら、ターゲットとするバイオマーカーを絞り込んでいく。しかしどのような疾患であれ、関わっているたんぱく質はざっと数千あるともいわれ、絞込みに膨大な時間とコストがかかっているのが現状だ。

 ところがプロテオミクスを使えば、コストの半分以上を占めるバイオマーカーの探索費用を大幅に圧縮できるという。「なぜならプロテオミクスは『仮説』を必要としないからです。昔と今の地図を見比べるように、病気を発症する前と後の画像を比較し、変化しているたんぱく質をみつけるだけ。変化しているものが疾病に特徴的なたんぱく質なので、変化を探すだけで絞り込みが一気にできるからです」(馬渕社長)。

 これにより、バイオマーカー候補を、従来の数千から、数百~数十に絞り込むことが可能だという。