物販打診をきっかけに開発者と議論

 今回の2社の連携のきっかけは“物販”だった。メガロス店舗での物販を担当する野村不動産ライフ&スポーツ 営業推進部 物販事業課長の村田亮平氏が新たに扱う製品として夏場に使う携帯扇風機に注目、特に暑い場所でも確実に冷却が可能なソニーの製品に目を付けた。ソニーが2020年に「REON POCKET」として製品化したもので、冷却機能を強化した第2世代品を2021年4月に「REON POCKET 2」として発売していた。

 既に2社の間で別のプロジェクトが進んでいたため、村田氏は社内の担当チームに相談。そして紹介されたのが、REON POCKETの営業担当ではなく、開発者であるソニー Business Acceleration部 REON事業室 統括課長の伊藤健二氏だった。

 「REON POCKETはもともとビジネスパーソンのモバイルエアコンとして開発したものだが、ライフスタイル分野だけでなくヘルスケア分野でも使えるのではと思っていた。ただし、ソニーにはどうやって利用するのかというメソッドなど、ヘルスケア領域での知見がない。そこで、整形外科の医師と一緒に研究し論文を発表するなど、エビデンスをとっているところだった」(伊藤氏)。今までにない小型温冷デバイスを持つソニーと、豊富なメソッドを用意しジムという現場で日々ユーザーに接するメガロス(野村不動産ライフ&スポーツ)──互いにない特徴を持つ2社に所属する2人はすっかり意気投合し、2021年夏からプログラムの開発を開始、2021年12月の発表に至った。

 ストレッチなどのメソッドとの併用にあたり、REON POCKETが備える2つの特徴が支持されているようだ。1つは温める・冷やすの両方を実施できる温冷機能、そしてもう1つが約54mm×約20mm×約116mmと小型な点である。

 温冷機能は、連携させるスマホアプリからの操作によって、それぞれ4段階に調整できる。加えて、同製品は温度切り替えの時間をアプリから設定する機能を備えている。同製品と同様、ペルチェ素子を使った温冷デバイスは美顔器などとして多く実用化されているが、温冷機能の時間はモードとしてあらかじめ設定されているものが多い。REON POCKETはスマホと連携させる形式だったこともあり、開発を担当した伊藤氏らが「自分で時間を設定できた方がユーザーにとって便利なのでは」と考え、2020年発売の従来機の段階からカスタム設定機能を実装したという。

REON POCKET 2の専用アプリの画面。カスタム設定機能では、4段階の温度と切り替え時間を設定できる
REON POCKET 2の専用アプリの画面。カスタム設定機能では、4段階の温度と切り替え時間を設定できる
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 この点が、ヘルスケア分野の研究者から注目された。既に温冷刺激により血行を促す研究は存在しており、先行研究では任意の時間で切り替えられる温冷刺激の手段として交代浴やシャワーが使われていた。REON POCKETはシャワーに比べて手軽であり、実施する場所やタイミングを選ばない。さらに小型で扱いやすく、例えば首元の鎖骨部分のくぼみなど、刺激を加えたい部分にピンポイントに当てることができる。

 ソニーが名倉整形外科(東京都中央区)らに委託して実施した研究でも、このカスタム設定機能や小型である点を活用し、首から肩にかけての僧帽筋にアプローチする実験が行われた。先行研究にならって3分間の温刺激と1分間の冷刺激を繰り返し与えるといった温冷交代刺激を実施したという。

 「筋膜リリースなどのツールはたくさんあるが、温冷デバイスはこれまでなかった。しかも小型というサイズが良い」と評価するのは、今回のプログラムを開発した野村不動産ライフ&スポーツ 事業推進部 フィットネス事業課 上級マネージャーの小松裕季氏だ。小松氏は自身のトレーニングによる疲労の回復にもREON POCKETを活用する。「温めて筋肉の緊張を和らげることで、ニュートラルな状態に戻しやすくなる。そのニュートラルな状態からマッサージをしたり、ストレッチしたりすると効果が高まる」(小松氏)。今回のイベントでは首を温めてストレッチしたが、フォームローラーを当てる前にその部位を温めるなど、筋膜リリースも温めてから実施するとさらに効果が高められるとみる。

例えば、胸の部分を温めて筋肉の緊張をやわらげてから、同じ部分にフォームローラーと自重を使って刺激を与え、筋膜リリースを行うのが効果的という
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例えば、胸の部分を温めて筋肉の緊張をやわらげてから、同じ部分にフォームローラーと自重を使って刺激を与え、筋膜リリースを行うのが効果的という
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例えば、胸の部分を温めて筋肉の緊張をやわらげてから、同じ部分にフォームローラーと自重を使って刺激を与え、筋膜リリースを行うのが効果的という

 凝りや痛み対策だけでなく、ボディラインの引き締めなどにも活用できると見込む。一般に、動かしていない部位は筋肉が硬くなって血流が滞り、脂肪が付きやすくなるとされるからだ。「温冷刺激によって血流を促せる点もいい」(小松氏)と、研究結果も咀嚼して実際のメソッドに落とし込む。同じデバイスを使いながら、メソッドを変えることで目的別の使い分けも可能になるとする。例えば、午前のレッスンでは高齢者などを対象として肩こり・ひざ痛・腰痛対策を、午後のレッスンは若年層などを対象にデコルテ・ウエスト・ヒップなどの引き締めを提案する、といった具合だ。様々なメソッドでの活用を検討する小松氏に対して、「アイデアがポンポンと出てくる」と伊藤氏も驚く。

ソニーのウエアラブルサーモデバイス「REON POCKET 2」。メーカー希望小売価格は1万4850円(税込)。元はソニーによるスタートアップ創出・事業運営支援プログラム「Sony Startup Acceleration Program」から生まれた製品で、2021年4月に第2世代品として発売された
ソニーのウエアラブルサーモデバイス「REON POCKET 2」。メーカー希望小売価格は1万4850円(税込)。元はソニーによるスタートアップ創出・事業運営支援プログラム「Sony Startup Acceleration Program」から生まれた製品で、2021年4月に第2世代品として発売された
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 肩こり対策とした今回のイベントは満席クラスが出るなど好評だったという。今後は物販はもちろん、店舗でのイベントに向くとみて、ツールを使ったレッスンなどを展開していく予定だ。また、ソニーと野村不動産ライフ&スポーツに大学などの研究機関を加えた3者でのエビデンス検証も検討しているとする。

■変更履歴
記事初出時、2ページ目に記載していた温冷機能の温度につきましては、使用条件に依存するため正確ではなく削除いたしました。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。

(タイトル部のImage:加藤 康)