加齢によるαディフェンシンの減少は免疫老化にも影響

 次にαディフェンシンと免疫老化の研究成果を見ていこう。

 中村准教授らは、35~81歳の健康な成人を対象に、便中のαディフェンシン量の測定を行う研究を実施した。すると、(1)加齢に伴いαディフェンシン量が低下していくこと、(2)免疫維持に有用な短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌が減少していることが分かった(図4)。加齢とともにαディフェンシンが減少することが腸内細菌叢の悪化に関わり、免疫力低下のリスクを高めることを解明した世界初の研究成果だ(図5)。

 加齢により疾病リスクが増え、重症化しやすくなることは、パンデミックとなった新型コロナでも明らかになっている。

 「新型コロナ感染により下痢症状が出ない人はαディフェンシンの値が高い、という報告もあります[2]。αディフェンシンは多方面の研究者から注目されている物質です」

図4●加齢とαディフェンシン量
図4●加齢とαディフェンシン量
北海道寿都(すっつ)町で行われた地域コホート調査。196人の健康な男女(35~81歳)の便中のαディフェンシン量を測定すると、70歳以上の高齢者グループのαディフェンシン量は70歳以下の中年グループよりも有意に低く、加齢とともにその量は減少することが分かった。腸内細菌叢では、免疫を活性化する短鎖脂肪酸を産生する菌も加齢とともに減少していた
(出所:Geroscience. 2021 Jun 8.
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図5●若年期から老年期に至る腸内細菌叢の疾患リスクの変化
図5●若年期から老年期に至る腸内細菌叢の疾患リスクの変化
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