「宇宙」の話題が増えている。2021年12月末には、岸田総理が総理大臣官邸で第25回宇宙開発戦略本部を開催。2020年代後半には、日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現を図るとした。同時に、民間の宇宙旅行に関する動きも活発になっている。

こうした中、宇宙におけるヘルスケアの在り方についての議論がにわかに始まっている(関連記事:これが“宇宙旅行時代”の健康管理)。2021年12月16日には、「宇宙×ヘルスケア」をテーマにしたイベント「宇宙×ヘルスケア 宇宙での課題を起点としたヘルスケアビジネスの可能性+JAXA新規プログラム紹介」が開催された(関連記事:「極限」の宇宙での気付き、ヘルスケアのイノベーションにつながる)。同イベントでは、「宇宙生活の実態とヘルスケアの課題」について議論するパネルディスカッションが繰り広げられた。その様子を見ていこう。

 ディスカッションに登壇したのは、有人宇宙システム(JAMSS) 有人宇宙技術部 副主任の山村侑平氏、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士健康管理グループ 主任医長の樋口勝嗣氏、デロイトトーマツコンサルティング 執行役員の西上慎司氏である。

 冒頭、JAMSSの山村氏が宇宙生活におけるヘルスケアの特徴を紹介。「宇宙環境特有の生理変化への対応が必要」「普段はあまり意識していないような健康上のリスクが顕在化しやすい場所」という2点を挙げた。

 具体的には、宇宙の場合だと「病院のような医療設備がない」「数時間以内の救急搬送ができない」といった問題がある。そのため、飛行前の健康管理として感染予防や疾病予防などが重要となるとした。さらに、宇宙滞在中には生理変化・リスクへの対応や医療処置/処方が必要となる。宇宙から戻ってきた後の地上生活への再適応も大きなポイントとなるため、飛行後の健康管理についても生理変化への対応が求められることになる。

 山村氏はまず、最初の議論テーマとして「飛行前の健康管理」にフォーカスを当て、宇宙で救急搬送に至るような事態を避けるためのポイントを聞いた。これについてJAXAの樋口氏は、現在の宇宙飛行士は「疾患などのリスクがない人を選ぶ」という方法を取っていることを紹介。しかし、この方法がいつまでも続くようでは「健康な人しか宇宙に行けない」ことになり、今後は「ある程度のリスクがあっても行けるような対処法や技術が必要になる」と指摘した。

有人宇宙システム(JAMSS) 有人宇宙技術部 副主任の山村侑平氏(写真:オンラインイベントのキャプチャー、以下同)
有人宇宙システム(JAMSS) 有人宇宙技術部 副主任の山村侑平氏(写真:オンラインイベントのキャプチャー、以下同)
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 さらに樋口氏は、「次のミッションが決まった宇宙飛行士は、実際に宇宙へ行くまでに数年かかる」という現状を紹介。そのため、その数年間に「健康維持のモチベーションを保つのがなかなか難しい」という課題があると説明した。