指だけで移乗できる

「リフトアシストジーンズ」は一見普通のジーンズに見えますが、介護者による移乗介助が非常に楽になるそうですね。

上田氏(以下、敬称略) てこの原理を応用しています。体重50㎏の女性でも、自分の体重の2倍以下、例えば体重80㎏の男性であれば、車椅子から楽に移乗できます。

動画●リフトアシストジーンズ 基本の使い方

AUNが公開している動画。てこの原理を使って車椅子から移乗できる。移乗の際には膝部分にピーヴォという布を巻き付ける(引用元:AUNホームページ)

 車椅子の人の膝にピーヴォ(帯)を巻きつけて、介護者はここにしっかり膝を押し当てます。そして車椅子の人の上半身を前傾にします。膝を押し当てたまま腕を伸ばし、体重を後方にかけます。膝を支点にしたテコの原理によって、介護者の体重で車椅子の人は自然にお尻が上がります。

 コツをつかめば、指を引っ掛けるくらいでも移乗できます。全く足に力が入らない方にはピーヴォは必須ですが、膝崩れがしにくい方であれば、ズボンだけでも立たせてあげることができます。

リフトアシストジーンズにおける物理構造の概念図。テコの原理を使って車椅子の人を起き上がらせる(画像提供:エナジーフロント)
リフトアシストジーンズにおける物理構造の概念図。テコの原理を使って車椅子の人を起き上がらせる(画像提供:エナジーフロント)
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すっと持ち上がるという感覚ですね。

上田 移乗介助は特に大変なものの1つです。介護業界では女性の介護員が多く働いていますが、体重50㎏の人が同じくらいの体重の人を運ぶのが当たり前の世界です。そんな業界は他にはない、かなりの重労働といえます。腰痛持ちの人が相当いらっしゃって、「腰痛市場」という言葉の存在を思わせるほどの状況です。

 そのため厚生労働省は2013年に、「職場における腰痛予防対策指針」という勧告を出しています。内容としては、腰部に大きな負担のかかる「抱きかかえ」を原則として禁止するというものです。しかし、実務上、そうはいってもなかなか難しい。

 リフト装置を使うことも考えられますが、操作に手慣れていても移乗を完了させるまで7分はかかる。ロボットスーツを装着する手もあるでしょうが、例えば家庭での老老介護で、妻が夫を移乗させるために装着するのはなかなか考えにくいでしょう。でも、このジーンズを履いてもらえば、ものの数分で終わります。