国立がん研究センターとNECは、AIを用いて早期大腸がんや大腸前がん病変をリアルタイムに検出するAI診断支援医療機器ソフトウエア「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」の医療機器承認を取得したことを発表した。欧州における医療機器製品の基準となるCEマークの要件にも適合している。

WISE VISION 内視鏡画像解析AIを用いて大腸内視鏡検査を行っている様子(出所:国立がん研究センター中央病院 内視鏡科の山田真善氏の発表資料、以下同)

 WISE VISION 内視鏡画像解析AIは、内視鏡画像を解析し、早期大腸がんや大腸前がん病変を検出した場合に、その位置をリアルタイムで円マークと通知音を使って知らせてくれるソフトウエアである。内視鏡画像全体を網羅的に解析するため、「内視鏡医が意識していなかった場所を注視できるようになり、見逃しの抑制が期待できる」と国立がん研究センター中央病院 内視鏡科の山田真善氏は話す。

WISE VISION 内視鏡画像解析AIの概要

 国立がん研究センターでは、2016年から「人工知能(AI)を活用した統合的ながん医療システム開発プロジェクト」に取り組んでおり、2017年7月には大腸内視鏡の検査画像から早期大腸がんや大腸前がん病変の発見が可能であることをNECと共同で発表していた。その後、製品化に向けた研究開発や臨床試験を経て、今回の医療機器承認に至ったという。

2017年7月の発表概要

 「2016年のプロジェクト開始時に掲げた、5年以内に実用化するという目標が達成できたことは感無量」と国立がん研究センター研究所 がん分子修飾制御学分野長の浜本隆二氏は語る。

発見が難しい表面型・陥凹型腫瘍を重点的に学習

 WISE VISION 内視鏡画像解析AIでは、国立がん研究センター中央病院に蓄積される1万2000種類の病変画像25万枚に、国立がん研究センター中央病院の内視鏡専門医が初見を付けたものをAIに学習させた。特に発見の難しい表面型や陥凹型腫瘍の画像を重点的に学習しているという。これによって、非典型的な早期がんや前がん病変の検出も可能にした。

WISE VISION 内視鏡画像解析AIを使って5mm大の隆起型病変を検出した場合のイメージ(出所:国立がん研究センター中央病院 内視鏡科の山田真善氏の発表資料、以下同)
WISE VISION 内視鏡画像解析AIを使って3mm大の表面型病変を検出した場合のイメージ

 さらに、WISE VISION 内視鏡画像解析AIはベンダーフリーなので、主要内視鏡メーカー3社の内視鏡に接続することが可能である。ソフトウエアを搭載した端末とモニターを、既存の内視鏡に接続するだけですぐに使用することができる。

WISE VISION 内視鏡画像解析AIを搭載した端末とモニター(提供:国立がん研究センター)

隆起型病変の検出は「熟練医と同等のレベル」

 今回、医療機器承認を取得するに当たって性能評価試験を実施した。試験ではAIが学習していない350種類の病変画像を含む動画を用いて、350種類の早期大腸がんや大腸前がん病変を正しく検出できる割合と、誤検出の程度について評価した。

 その結果、隆起型病変は感度95%で検出でき、「大腸内視鏡熟練医と同等のレベルであると確認できた」と山田氏は言う。表面型病変の感度が75%、病変がない場合に誤検知しないことを示す特異度は89%だった。

国立がん研究センター中央病院 内視鏡科の山田真善氏(写真:オンライン画面のキャプチャー)

 表面型病変の検出については、病変の大きさ別に感度を調べたところ、1~4mmの病変で感度79%、5~9mmの病変で感度78%、10mm以上の病変で感度76%という結果が得られた。このことから、「サイズが小さいからといって感度が落ちることはなかった」と山田氏は話す。

 さらに、医師による読影試験も行った。この試験では、通常の内視鏡モニターのみを見て読影した場合と、通常のモニターに加えてWISE VISION 内視鏡画像解析AIを用いて読影した場合を比較した。

 その結果、大腸内視鏡検査の経験が浅い医師では、通常モニターのみでの読影では76.6%だった表面型病変の感度が、AIソフトウエアを用いることで82.8%まで高くなることが分かったという。WISE VISION 内視鏡画像解析AIを使うことで、医師の技量による診断精度のばらつきを解消できると期待される。

 今後は、「人間には認識が難しい平坦型腫瘍や陥凹性病変をAIに学習させて、さらに精度を向上させたい」と山田氏は意気込む。さらに、早期大腸がんや大腸前がん病変の微細構造や模様を学習させることで、大腸病変の質的診断やリンパ節転移の予測への対応も目指したいとする。将来的には、CT画像や病理画像、分子生物学的情報などと組み合わせた、より利用価値の高いリアルタイム内視鏡画像診断補助システムを実現したい考えだ。

(タイトル部のImage:出所は国立がん研究センター)