難溶性の匂いも嗅ぎ分けることが可能に

 竹内氏らは既に、過去の研究で、昆虫の嗅覚受容体を人工細胞膜上に組み込んだセンサーを開発してきた。水溶液中に嗅覚受容体が存在している構造で、水溶液に溶解した状態の匂い分子に対して高い感度と分子識別能力があることが確かめられている。しかし、このセンサーでは、難溶性の匂い分子を検知することは難しいという課題があった。

 そこで今回は、難溶性の匂い分子を嗅覚受容体に届けるために、撥水コートを施した微細なスリットの上に、人工細胞膜を形成する液滴を配置した匂いセンサーを作成した。スリットに匂い分子を含む気体を流すことで水溶液が撹拌され、匂い分子を効率的に液滴中に導入することができるという。

 その上で、感度を検証するため、肝臓がんのバイオマーカーであるオクテノールを含む呼気を導入した。その結果、呼気中にオクテノールを混合していない場合は明確な信号が得られなかったが、呼気中にオクテノールをそれぞれ0.5ppb、5ppbで混合した場合には、嗅覚受容体で明確な信号が得られたという。つまり、呼気中に含まれる微量な肝臓がんのバイオマーカーをppb(10憶分の1)レベルで検出できたというわけだ。

 さらに、並列化した人工細胞膜に蚊の嗅覚受容体を再構成させることで、16個の並列化した人工細胞膜で同時に匂いを計測できるセンサーデバイスを作成した。これによって、1ppm(100万分の1)のオクテノールを10分以内に90%以上の確度で検出できるようになったという。

並列化した16チャンネルで同時計測できる