富士通は2020年1月15日、国内の従業員7万人を対象にがんの予防や仕事と治療の両立支援などを学ぶ「がん教育」を開始した。同年3月末までの間、医師による講義とe-Learningを受け、がんの正しい知識を習得する。生活習慣の改善、検診受診率向上につながる健康意識の向上を図る。企業の従業員向けがん教育としては国内では最大規模で、海外でも例がないという。

 従業員向けがん教育のプログラム監修と講義は、東京大学医学部附属病院 放射線治療科 准教授の中川恵一氏が務めた。同日、250人の従業員が会場で受講し、同時に全従業員に向けオンラインで配信。講義は録画され、いつでも聴講できるようにする。

 e-Learningは、「がんの基礎知識」「がん予防につながる生活習慣」「早期発見・早期治療のためのがん検診の重要性」「仕事と治療の両立支援」などのプログラムで構成。同社のe-Learningシステムを用いて、3カ月間で全従業員が受講するよう勧奨していく。

 同社では、従業員のがんによる死亡者数は、直近5年間の男性は年平均で8.8人、女性は同1.2人。新規発生は男性が同37.4人、女性が11.2人だという。

富士通 健康推進部の東氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)
富士通 健康推進部の東氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)
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 富士通 健康推進本部 健康事業統括部 統括部長の東泰弘氏は、従業員のがん罹患者が多いわけではないものの、定年延長などにより高齢従業員の増加や女性従業員が増加する中で、がんを患う社員が今後増えることが予想されると説明。「仕事と治療を両立させる支援制度やサポート体制を拡充する一方、社員の生活・行動を改善していくために健康に対する知識と意識向上が必要だと考えた」(同氏)。

「大人のがん教育は、企業が主体的に行うべき」

 中学・高校の学習指導要領の中にがん教育が明記され、中学校は2021年度から、高校は2022年度からがんに関する授業が全面実施。小学校も学習指導要領にないものの2020年度から先行して実施される。記者説明会に登壇した東大医学部の中川氏は、「子どもたちが学校でがんについて学ぶようになると、世代間の格差が生じる。大人のがん教育は、企業が主体的に行うべきだ」と訴えた。

東京大学医学部附属病院の中川氏
東京大学医学部附属病院の中川氏
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 中川氏は、がんは最低限の知識の有無で運命が分かれる病気だとも指摘。「男性では60~75歳、女性では35~75歳くらいの間にがんで死なないことが、人生100年を謳歌するために必須。リテラシーの度合いによって、がん検診受診率も大きな差が出る」とし、大人のがん教育の重要性を強調した。

 今回の従業員向けがん教育は、中川氏のこうした考えに富士通が賛同して実施にこぎ着けた。「(今回のプログラムは)富士通と協力しながら非常に良い内容になっている。わかりやすく、おそらく興味を持ってe-Learningを進めてもらえるだろう」(同氏)と自負した。

 富士通では今後、e-Learningのプログラムを厚生労働省の委託事業である「がん対策推進企業アクション」を通じて、パートナーの3210企業・団体に在籍する約8万人の従業者にも提供する予定だ。


(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)