フィリップス・ジャパン(以下、フィリップス)は2021年1月20日、2021年の事業戦略発表会を開催した。緊急事態宣言下であることを考慮し、オフラインとオンラインのハイブリッド方式となった。現地の発表会はメディア関係者にマスクに加えて使い捨てフェイスシールドの着用を義務付け、記者席の間隔を十分に空けるなど徹底した感染症対策を取った上で進行した。

 同社が事業戦略発表会を行なうのは2019年11月26日以来のこと。およそ1年2カ月ぶりとなったわけだが、この間には新型コロナウイルスによる社会の激変があった。冒頭、同社代表取締役社長の堤浩幸氏は「コロナで世界が変わった。これからは将来的なビジョンではなく、実現可能なパーパスドリブン(目的を明示して行動すること)によって前進していく」ことを強調した。

フィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏(写真:小口 正貴、以下同)

 グローバルで医療・ヘルスケア事業を展開する同社にとって、新型コロナがもたらした影響は計り知れない。医療崩壊が叫ばれ、その結果、新型コロナ以外の患者が満足な医療を受けられない状態が続いている。堤氏は、前回の発表会で示したヘルスケア統合システムについて触れ、「5年後、10年後かと思っていたデータ連携の重要性が一気に高まった」とし、2021年の戦略はそれをいかに拡大・強化していくかが鍵を握ると語った。

 情報基盤となる「Tasy(タジー)」は日本IBMとの協業によって日本市場への最適化が進められている。すでに海外950以上の医療機関で導入済みであり、業務改革支援や複数病院のデータベース連携、医療従事者の意思決定支援などを行なうソリューションだ。新たに大塚商会などのプレーヤーを加え、医療従事者、病院経営者、サプライチェーンまでを包括したデータプラットフォームに育てる構えだ。

これが5つの戦略的要素

 こうした基盤をもとに進めるデジタル化戦略が2021年の肝となる。具体的には「ヘルスケアの仮想化」「ヘルスケアのデジタル化」「価値ベースのヘルスケア」「ヘルスケアのXaaSモデル化」「エコシステム統合」の5つを掲げた。

 「5つの戦略的要素の実現に向けては、すでにさまざまなプロジェクトが動いている。例えばデジタル病理診断、eICU(遠隔集中治療ソリューション)についてはどちらも薬機法の認証を取得して医療現場で利用できる環境を整備した。これにより医療従事者の生産性を向上し、患者の早期回復をサポートする。医療体制のアップグレードに貢献するソリューションだ」(堤氏)

 堤氏はデジタル病理診断に関して、受託臨床検査大手のエスアールエルと検討していることを明らかにした。そのほか、2020年6月にはインテグリティ・ヘルスケアと共同で開発した「eHomeCare呼吸管理プログラム」を発売し、継続モニタリングによる在宅呼吸ケアを目的としたオンラインソリューションを提供。東北大学、名古屋大学とは共同でAI研究開発人材育成に乗り出す。

 中でも「ヘルスケアコマンドセンター」の構想は壮大なものだ。ITによっていつでも、どこでも、必要に応じてヘルスケアサービスを受けられる世界観であり、「データを分析して医療機関や地方自治体と連携しながら患者一人ひとりにマッチングした医療を提供していきたい」(堤氏)と説明した。

 エコシステムの統合では、自治体、アカデミア、病院との連携をより深める。進行中プロジェクトの1つである岐阜県美濃加茂市の事例では、美濃加茂市長の伊藤誠一氏、社会医療法人厚生会 理事長の山田實紘氏をオンラインで結び、フィリップスが協力するメディカルシティの概要について紹介。伊藤氏は「健康医療に最先端技術を取り入れ、予防、治療に取り組む」と抱負を語った。詳細な内容については2021年3月の発表を予定している。

オンラインでコメントを寄せた美濃加茂市長の伊藤誠一氏(画面左)、社会医療法人厚生会 理事長の山田實紘氏(画面右)

日本サッカー協会の田嶋会長が登壇したワケ

 後半は日本サッカー協会(以下、JFA)会長の田嶋幸三氏を迎え、堤氏との対談を行なった。フィリップスでは2020年の事業戦略としてスポーツヘルスの拡大を挙げており、2020年12月にJFAとの連携協定を締結。今回の施策ではJFAアカデミー選手への口腔ケア、パフォーマンス向上に向けた睡眠、健康データの確立と活用検討、地域住民への健康促進、安心・安全なスタジアムの実現を掲げた。対象はJFAアカデミー福島/Jビレッジが中心となる。

対談に登場した日本サッカー協会会長の田嶋幸三氏

 田嶋氏は「JFAは今年で100周年。コロナ禍で大変な時期だが、だからこそ変革のチャンスがある。アスリートに限らず、全国の老若男女が健康でサッカーを楽しめる環境を提供するために、デジタル化の基礎を築きたい」と期待を寄せた。堤氏は「サッカーは世界でも非常に人気のあるスポーツなので効果を最大化できる。データドリブンで個々のプレイヤーに最適な解決策を提示できれば」と語り、今後の協力体制に自信をのぞかせた。

(タイトル部のImage:小口 正貴)