シンプルかつ再現性が高い技術であることが重要

東京工業大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所助教の野本氏(写真:Beyond Health、以下同)

 現在、ナノバイオテクノロジーや細胞技術を用いた、抗体医薬をはじめとする高度な機能を持った医薬品が注目されているが、非常に高価な材料や設備が必要であったり、複雑な製造プロセスでの品質保証をどうするかなどが大きな課題となっている。「こうした高機能の医薬品を社会実装していくために大事なのは、シンプルでありながら非常に再現性が高い技術であるということ」と西山氏。

 野本氏も、「スライムの化学のような非常に簡単なケミストリーを用いることは非常に重要。安価かつ安全に合成しやすいポリマーの代表例であるPVAは、抗体医薬等の原料と違い、工業的な大量生産にも向いている」と言う。

 また、BNCTの研究開発も50年以上前から日本を中心に進められてきた歴史があり、現在も日本が世界の最先端を走っている。「日本オリジナルの技術を組み合わせた本治療法を将来世界に輸出していきたい」と西山氏は意気込む。

東京工業大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所教授の西山氏

 さらに、BPAを18Fで標識した18F-BPAは、PET(陽電子放射断層撮影)検査の分子プローブ(標識薬剤)としても使われているため、がん細胞への取り込みを可視化できる点も大きなメリット。「18FーBPAをコンパニオン診断薬として用いることで事前にがん細胞への集積状況を確認した上で治療を行うことができるので、臨床試験でも高い治療成績が期待できるし、患者ごとに異なる集積の度合いを見極め、確実に効く治療を提供できる」と西山氏は強調する。

 現在、BNCT用のホウ素化合物の開発を行っているステラファーマと共同研究を進めており、「2〜3年以内に前臨床試験を終え、5年以内には臨床試験を開始したい」(西山氏)としている。

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