経済産業省が主催する「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020」(JHeC2020)の最終審査会が、2020年1月23日に東京都内で開催された。ビジネスコンテスト部門の5社がファイナリストとして登壇(関連記事)。グランプリの座を競ってピッチを繰り広げた。

ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2020の授賞式の様子(写真:剣持 悠大、以下同)

 審査の結果、ビジネスコンテスト部門のグランプリはCI Inc.(シーアイインク)が獲得した。同社は、「医療×保育×テクノロジー」を軸に事業を展開。病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」の開発を進めている。

 同社 代表取締役の園田正樹氏は受賞式のスピーチで次のように述べた。「当社は産官学の連携を意識してイノベーションに挑戦している。グランプリを励みに、強いチームで良いプロダクトを作って、世の中にインパクトを与えるスタートアップとして成長していきたい」。

グランプリを獲得したCI Inc. 代表取締役の園田正樹氏

 ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテストは2016年に始まり、今回が5回目の開催となる。歴代のグランプリ獲得企業は、MRT、トリプル・ダブリュー・ジャパン、mediVR、カケハシの4社。CI Inc.は5代目のグランプリとなる。

アイデアコンテスト部門はカイテクがグランプリ獲得

 前回から始まったアイデアコンテスト部門には、二次審査を通過した4組が登壇した。今回から同部門にもグランプリが設けられた。審査の結果、介護業界の人材不足の解決に向けた介護ワーキングシェアサービス「カイスケ」を開発する武藤高史氏(カイテク 代表取締役)がグランプリを獲得した。

カイテク 代表取締役の武藤高史氏

 第5回目を迎えた今回のコンテストでは、5周年記念特別賞が設定された。アイデアコンテスト部門とビジネスコンテスト部門の9人の中から、来場者が最も印象に残ったプレゼンターを投票。結果、ビジネスコンテスト部門のグランプリを獲得したCI Inc.の園田氏が受賞した。

これがファイナリストによる白熱のピッチ

 ビジネスコンテスト部門のファイナリストは、グランプリを獲得したCI Inc.のほか、アトピヨ、エーテンラボ、リハートテック、ジョリーグッド。最終審査会で白熱のピッチの様子を登壇順に見ていこう。

■アトピヨ

 アトピヨが開発・提供するサービスは、アトピー専用の画像SNS「アトピヨ」。3つのアレルギー疾患を経験した同代表のRyotaro Ako氏が、最も問題意識を感じたアトピーに関して自らプログラミングを習得して開発したという。

アトピヨ 代表のRyotaro Ako氏

 アトピヨの特徴は大きく3つ。第1はユーザー間のコミュニケーションやサポートがあること。「投稿のコメント1500件を分析すると、患者同士のコミュニケーションを経ることによって、ポジティブな感情は2倍以上に増加していることが裏付けられた」(Ako氏)。第2は、画像による症状記録により、その変化が一目でわかること。

 第3は、利用者が登録するアトピー歴などのデータベースである。現在、約4000件のアトピー歴をはじめ、顔や手足など部位ごとにタグ付けされた画像が1万1000件登録されている。「国内でアトピーに特化した1万枚の画像データはほとんどない」(同氏)という。

■エーテンラボ

 「行動変容でみんなを幸せにする」というビジョンを掲げるエーテンラボ。同社は、三日坊主防止アプリと呼ぶ「みんチャレ」を開発・提供している。5人1組のコミュニティーの中でお互いが励まし合いながら行動変容のモチベーションを高めていく仕掛けだ。生活習慣病では、治療の継続あるいは生活習慣改善のための行動をいかに継続できるかが課題。その難しい課題を克服するのに効果を発揮するとするのが、みんチャレである。

エーテンラボ 代表取締役CEOの長坂剛氏

 今日行った生活習慣の証拠写真をチャットで送り合い、励まし合うことで本当に習慣化するのか――。同社 代表取締役CEOの長坂剛氏は、「みんチャレの習慣化成功率は69%。1人で取り組むより、8倍の成功率がある」と強調した。

 みんチャレの革新的なポイントは、医師に歓迎され推奨されていることだと言う。「みんチャレはアプリ内で具体的な行動変容をアドバイスすることなく、主治医の指示に従った生活習慣の改善ができるためだ」(長坂氏)とした。

■リハートテック

 高齢療養者の誤嚥を予防する器具「タン連くん」を開発したリハートテック。同社 取締役の笠原直樹氏は30年間にわたり歯科医院を経営、現在は特別養護老人ホームを運営している。歯科医として口腔ケアの施設訪問を行う中で、多くの高齢者が誤嚥性肺炎などで亡くなるのを見てきた経験から、嚥下に関係する筋肉強化が必要と実感したことから開発した。

リハートテック 取締役の笠原直樹氏

 開発の着想は哺乳瓶。タン連くんには、把手付きのボトルに哺乳瓶の乳首部分と同様のものを付け、舌から続く嚥下の筋肉を鍛えることができるという。「発案したものが世の中になく、特許を取得することができた」(笠原氏)。2019年11月末に医療機器の認定を受けた。

 現在、商社や歯科医院を営業先とする企業などと販売提携している。「今後、シニアの会員が増加しているスポーツジムやトレーニング施設などと協業していきたい」(笠原氏)とした。

グランプリのCI Inc.は最後に登壇

■ジョリーグッド

 ジョリーグッドは、VR(仮想現実)技術を用いた発達障害者向けのソーシャルスキルトレーニングプログラム「emou(エモウ)」を開発・提供する。仮想的に再現された教室や友だちとの会話、突発的な不測事態などを本人目線で体験することで、対人コミュニケーションなどのソーシャルスキルの獲得を目指すものである。

ジョリーグッド シニアプロデューサーの青木雄志氏

 emouの特徴は3つ。第1はVRで何度でも現実空間を教材に、良質なソーシャルスキルトレーニングができること。第2が、誰でも一定水準以上のトレーニングができること。「画面の共有が可能なVRコンテンツだけでなく、トレーニング方法の進行マニュアルもセットで提供。経験が浅いスタッフでも一定水準以上で行うことができる」(同社 シニアプロデューサーの青木雄志氏)と説明。

 第3は、障害者の視線データを自動で計測し、効果を可視化・共有できる点。視線データを確認することで、障害者の様々な課題を浮き彫りにすることが可能という。「こうした特徴が評価され、全国の発達障害支援施設に続々と導入されつつある」(青木氏)とした。

■CI Inc.

 CI Inc.は、産婦人科医である園田正樹氏が起業したスタートアップで、「安心して産み育てられる社会をつくる」ことをミッションとしている。現在開発を進めているのは、いつでも近所の空いている病児保育室をLINEアプリで簡単に予約できる病児保育ネット予約サービス「あずかるこちゃん」。病児保育事業委託者である市区町村からシステム利用料を徴収するビジネスモデルという。

CI Inc.の園田氏

 同サービスは、ホームページ上で近所の病児保育施設を検索し、LINEで予約できる。予約の際は第一希望と第二希望の複数施設を予約できるのが特徴だ。「当日朝に子どもの容体が回復しキャンセルがあった場合、予約者を第一志望にシフトし、空いたところは別の人が繰り上げて利用できる。この仕組みで特許を取得している」(園田氏)。

 現在5施設で実証実験を実施しているが、「施設スタッフがあずかるこちゃんのファンになり、他の施設や自治体の担当者に積極的に営業してくれている」(園田氏)という。

 同社は、病児保育のプラットフォームを実現していくとし、その先に保育園と連携して日中に発熱した園児を、保護者を呼ぶことなく病児施設に送迎するようなサービスをつくっていく計画だ。

(タイトル部のImage:剣持 悠大)