介護現場の課題をテクノロジーで解決したい介護事業所と、実際にテクノロジーを提供するケアテック企業などをつなぐマッチングイベントが1月21日に東京都内で開催された。主催は日本ケアテック協会。公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団が共催し、経済産業省関東経済産業局が協力した。

この日メーンで行われたのは、介護事業所からのニーズプル型(技術課題解決型)のプレゼン。ケアテックを既に導入したり新規導入を検討している介護事業所と、現場を運営しながらテクノロジーやサービス開発を進める介護事業所が登壇した。これらの介護事業所とのマッチングを希望する場合は、サービスの提供や共同開発・実証、協業などに関する提案内容を所定のシートに記入し、事務局までメールで送る必要がある。提出期限は2月7日まで(詳細はこちら)。

介護事業所によるプレゼンの様子を2回にわたってお届けする。

●社会福祉法人小田原福祉会

 神奈川県小田原市で特別養護老人ホーム潤生園をはじめ、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、通所介護(デイサービス)など20拠点の事業所を運営する社会福祉法人小田原福祉会。1978年に特養を開設して以来、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、在宅支援も充実させ、介護食の開発や昼夜2食の配食サービスの展開、24時間・365日対応の訪問介護の実施など、数々の先進的な取り組みを実践してきた。現在、500人超の職員を抱える。

 良いケア、良いサービスを追求するには介護の質の計測が不可欠との判断から、1990年代に入ると、当時まだ珍しい介護記録システムをいち早く導入。電子手帳で記録を入力し、データを蓄積してきた。小田原福祉会理事の井口健一郎氏によると、今も変わらず、これらのデータは文書やグラフ化していつでもサービス内容・質を目で見えるようにするほか、利用者家族にデータ情報を提供し、介護に対する安心と信頼のコミュニケーションに役立てているという。蓄積・分析したデータを元にカンファレンスで意見交換を行い、次のケアマネジメントにつなげていくことも、「当たり前の組織風土になっている」と井口氏は語る。

 ほかにも各種ICTや福祉用具の積極的な活用により、職員の業務負担軽減や利用者の利便性向上、ケアプランの改善などに取り組んできた。

 2021年度の介護報酬改定では、自立支援・重度化防止に向けたデータの収集・活用による「科学的介護」を推進。介護事業者が、「LIFE」(科学的介護情報システム)と呼ばれる介護の新データベースに、介護現場で行ったケアの内容やそれを受けた利用者の状態などを一定の様式で入力して厚生労働省に送ると、そのデータを分析・評価した結果がフィードバックされ、それに基づきサービス計画を見直すなどPDCAサイクルを推進してケアの質を向上させれば、加算を算定できるようになった。

 だが、多くの介護現場からはLIFEへのデータ入力が負担になっているとの不満の声があがっているのも事実。一方、小田原福祉会では、データをケアに活かしていくのは当然であり、「LIFEは積極活用すべきという考え」(井口氏)だ。

 そんな小田原福祉会が今後取り組みたいテーマや課題として掲げるのが、介護全般におけるテクノロジーによる介護のエビデンスの構築と可視化、テクノロジーによる職員のマンパワーについての効率化・省力化の探求。これまでの自分たちの取り組みに満足せず、さらなる高みを目指すというわけだ。

「ケアテック企業に対しては実証実験なども広く行える環境があるので、ぜひ様々な提案をお待ちしている」と井口氏は結んだ。

社会福祉法人小田原福祉会理事、特別養護老人ホーム「潤生園」施設長の井口健一郎氏
社会福祉法人小田原福祉会理事、特別養護老人ホーム「潤生園」施設長の井口健一郎氏
[画像のクリックで別ページへ]