オリンパスは、超拡大内視鏡で撮影された大腸内視鏡画像をAIで解析し、リアルタイムに医師の診断支援を行う内視鏡画像診断支援ソフトウエア2製品を2021年2月5日に発売する。一つが、腫瘍や浸潤がんを高精度に判別する「EndoBRAIN-Plus(エンドブレインプラス)」、もう一つが、潰瘍性大腸炎の炎症状態を高精度に評価する「EndoBRAIN-UC(エンドブレインユーシー)」である。

2021年1月27日に開催されたオンライン記者会見でEndoBRAIN-Plusのデモンストレーションを行っている様子(提供:オリンパス、以下同)

 EndoBRAIN-Plusは大腸がんの治療方法の選択、EndoBRAIN-UCは潰瘍性大腸炎の治療方法の選択において、それぞれ医師の診断を支援するソフトウエアだ。どちらのソフトウエアも、オリンパスの超拡大内視鏡「Endocyto」および内視鏡システム「EVIS LUCERA」と組み合わせて使用する。

 オリンパスは既に、大腸内視鏡診断に活用できるAIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウエアとして、病変の発見を支援する「EndoBRAIN-EYE(エンドブレインアイ)」と、腫瘍の鑑別を支援する「EndoBRAIN(エンドブレイン)」を販売している(関連記事:大腸内視鏡画像から病変検出、オリンパスが支援ソフトウエア発売)。今回新たに発売するEndoBRAIN-PlusとEndoBRAIN-UCを組み合わせることで、大腸内視鏡診断においてAIによる包括的な支援をし、医師の負担軽減につなげたい考えだ。

EndoBRAINシリーズの製品一覧と特徴
EndoBRAINシリーズの各ソフトウエアの位置付け

 なお、EndoBRAIN-PlusとEndoBRAIN-UCは、どちらも昭和大学横浜市北部病院と東海国立大学機構名古屋大学、サイバネットシステムにより共同開発された。サイバネットシステムが2020年にそれぞれ医薬品医療機器等法の製造販売承認を取得し、オリンパスが国内における独占販売権を取得した。今後3年間で150台の販売を目指す。

非腫瘍・腺腫・浸潤がんの可能性を数値で表示

 EndoBRAIN-Plusは、超拡大内視鏡で撮影された大腸内視鏡画像をAIが解析し、非腫瘍・腺腫・浸潤がんのいずれかの可能性を数値で表示してくれるソフトウエアである。通常検査で行われる内視鏡操作と連動して判定結果が表示されるため、医師による追加の操作を必要とせずに、最適なタイミングで診断支援を受けることができる。国内6施設から内視鏡画像を集積し、合計6万8000枚以上の画像を学習させた。

EndoBRAIN-Plusの判定結果例

 EndoBRAIN-Plusのアルゴリズムは次の通り。まず、染色した大腸粘膜を超拡大内視鏡で撮影した画像をテクスチャ解析し、312次元の特徴量に変換する。これをサポートベクターマシンと呼ばれる機械学習の手法を用いて解析することで、撮影された画像の病変が非腫瘍か腫瘍、浸潤がんのどれにあたるのかを推定し、それぞれの可能性を数値で出力する。

EndoBRAIN-Plusの概要
EndoBRAIN-Plusイメージ

内視鏡的治療か外科的治療かの判断を支援

 大腸内視鏡の診断で難しいのは、「早期がんの治療方針の決定」と昭和大学横浜市北部病院 消化器センター 講師の三澤将史氏は話す。そもそも大腸がんは、固有筋層までがんが浸潤しているかどうかで早期がんと進行がんに分類される。このうち早期がんは、壁深達度に応じて内視鏡的治療か外科的治療のどちらかを選択する必要がある。

大腸がんの分類(出所:三澤氏の発表資料、以下同)

 具体的には、粘膜下層に1mm以上浸潤している壁深達度T1bと診断された場合は外科的腸切除が必要であるのに対し、粘膜層のみの浸潤である壁深達度Tisまたは粘膜下層に1mm未満の浸潤であるT1aと診断された場合は内視鏡切除で根治が可能とされている。

左2枚は内視鏡的治療で根治可能な早期がん、右2枚は外科的治療が必要な早期がん

 つまり、大腸内視鏡診断で病変を発見した後は、(1)腫瘍か非腫瘍かの鑑別診断、(2)腫瘍の場合は良悪性の診断、(3)悪性の場合は内視鏡的治療で根治可能なのか外科的腸切除が必要かの診断、の3段階を踏んで治療方針を決める。既に販売されているEndoBRAINは、(1)の腫瘍か非腫瘍かを診断する際に支援してくれるソフトウエアである(関連記事:AIで大腸の腫瘍を見極める―“幻のがん”発見から30年の道のり)。

 これに対して今回発売するEndoBRAIN-Plusは、(2)の診断を支援し、良性腫瘍なのか浸潤がんなのかの可能性を提示してくれる。医師は判別結果を参考にしながら、(3)のフローに進み、内視鏡的治療または外科的腸切除を選択できるというわけだ。

 三澤氏らは、EndoBRAIN-Plusの性能を評価するため、50病変を対象にした500枚の静止画像をEndoBRAIN-Plusで解析し、病理結果と比較を行った。その結果、浸潤がんに対する感度(浸潤がん病変のうち正しく浸潤がんと判断された画像の割合)は92.8%、浸潤がんに対する特異度(浸潤がんではない病変のうち正しく浸潤がんではないと判断された画像の割合)は97.3%という結果が得られたという。

昭和大学横浜市北部病院 消化器センター 講師の三澤将史氏(写真:オンライン記者会見の画面キャプチャー)

炎症活動性の有無を数値で表示

 EndoBRAIN-UCは、超拡大内視鏡と狭帯域光観察(NBI)を組み合わせて観察することで得られる微細な血管などの情報をAIが解析し、潰瘍性大腸炎の炎症状態を評価してくれるソフトウエアである。

EndoBRAIN-UCの判定結果例(提供:オリンパス、以下同)
EndoBRAIN-UCイメージ

 潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患。罹患者は国内に16万人以上いるとされ、国が定めた指定難病の一つだ。完治するのが難しいとされ、炎症が強い活動期と比較的穏やかな寛解期を繰り返すため、薬による内科的治療で炎症を抑えて症状をコントロールすることが重要である。

 治療方針を決定する際には、大腸内視鏡検査で炎症活動性の有無を定期的に評価する必要がある。ここにEndoBRAIN-UCを活用して潰瘍性大腸炎の炎症活動性の有無を数値で示すことで、検査中に病理診断を予測し、治療方針の判断を支援することができる。なお、通常検査で行われる内視鏡操作と連動して判定結果が表示されるため、医師による追加の操作は必要ない。

EndoBRAIN-UCの概要

 EndoBRAIN-UCの性能評価試験では、感度(潰瘍性大腸炎の寛解期の画像のうち正しく寛解期と評価された画像の割合)95%、特異度(潰瘍性大腸炎の寛解期ではない画像のうち正しく寛解期ではないと評価された画像の割合)91%、正診率(潰瘍性大腸炎の寛解期・活動期の画像のうち正しく寛解期・活動期と評価された画像の割合)92%であることが確かめられたという。

(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)