日本の脳卒中や糖尿病などの実態や原因の解明に大きく寄与してきたことで知られる「久山町研究」。福岡県久山町の住民を対象に、長年実施されてきた疫学調査だ。

 この調査にかかわる九州大学大学院 医学研究院 衛生・公衆衛生学分野 教授の二宮利治氏が、「福岡県・久留米市 地方創生事業成果報告会」(2019年1月24日に東京都内で開催)に登壇。生体成分と認知症発症の関係について講演した。

九州大学の二宮氏(写真:Beyond Healthが撮影)

認知症発症リスクは「約半分」

 二宮氏は、「カルノシンやアンセリンを多く摂取している人は認知症になりにくい」と語る。同氏らが実施した研究で明らかになった。

 カルノシンとアンセリンは、鶏のむね肉に多く含まれているイミダゾールペプチドの一種。中でも、「はかた地どり」に特に多く含まれているという。

 これらに着目した理由は、「(九州大学大学院農学研究院の)片倉喜範先生らが久山町住民に対して行った、鶏のむね肉由来の試験食とプラセボを使ったランダム化比較試験で、カルノシンやアンセリンを多く摂った人が言語性記憶スケールの成績が良かった」(二宮氏)という結果があったからだ。

 ただし、片倉氏らの研究は参加した集団が60歳以上の43人と少なく、短期間での調査だった。そこで、二宮氏らは疫学データ的に客観性を持たせようと、実際の保存血清からカルノシンとアンセリンを計測。その血中濃度と認知機能リスクの関係を調べる研究を、九州大学大学院農学研究院と共同で実施した。

 カルノシンやアンセリンは、体内に吸収されるとすぐに分解されてしまうため、実際にはそれらの摂取量や貯蔵量を反映するβ-アラニンを測定。久山町住民の2007年調査で認知症でなかった人が、5年後の2012年調査時にどれくらい発症したかを、β-アラニン値で分析した。

 その結果、血清中のβ-アラニン値が高い群は、最も低い群に比べて認知症発症リスクが「約半分」との結果が出たとした。