●Syrinx 竹内雅樹氏

 竹内氏は、喉頭摘出者団体「銀鈴会」の協力を得ながら、失われた声を取り戻すデバイス「Syrinx」を開発している。従来、声を失った人たちは「電気式人工喉頭(EL)」と呼ばれるデバイスを喉に当て、振動音を口パクで言葉にして発声してきた。しかし、ELは単一周波数の振動しか生成できないことから「誰が使っても同様の無機質な機械音声しか出せない」(竹内氏)など、利用者にはさまざまな不満があった。

竹内雅樹氏

 Syrinxは、振動パターンに工夫を加えることで「人に近い振動音を再現できる」(竹内氏)のが大きな特徴だ。実際の人の録音データと独自アルゴリズムを組み合わせて振動パターンを作成しており、声を失った人が「過去の自分の声を取り戻して話せる」と竹内氏は説明する。さらに、公共の場で利用しても悪目立ちしないデザイン性もポイントとなっており、デバイスカバーの交換によるカラーカスタマイズにも対応する。

 販売にあたって、まずは2023年からの2年間で、国内の喉頭摘出者の50%にあたる1万5000人への普及を目指す。さらに、2025年からは海外販売も開始する予定だ。また、Syrinxは口や舌を動かせば誰でも利用できることから、竹内氏は「喉頭がん以外のがん患者やALS患者への活用にまで広がれば、潜在ユーザーは世界で140万人にのぼる」と補足した。

●西新井ハートセンター 医師 重城健太郎氏

 重城氏は、WITHコロナ時代でも陽圧呼吸療法ができるパーソナル陰圧マスク「CoroPAP」を紹介した。

重城健太郎氏

 そもそも、急性心不全などの心疾患がある新型コロナウイルス感染者は、ない人と比べて「院内死亡率が約4倍高まる」(重城氏)。また、急性心不全の患者には迅速な呼吸サポートが求められるが、従来はノドに管を入れる「気管内挿管」より、簡単なマスク装着で一定の効果が見込める「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」の方が多かった。しかし、CPAPのマスクでは「エアロゾル」がリークする可能性があることから、コロナ禍ではCPAPを使用できない状況に陥ってしまった。この問題を解決すべく、「リークを抑えるCPAP」として生まれたのがCoroPAPである。

 CoroPAPは、頭部全体を覆うことでエアロゾルを防止する。また、緊急時には顎下にあるジッパーを開けることで、素早く脱着できるようになっている。マスク内圧測定検査で「CPAPと同等の陽圧」(重城氏)を確認するとともに、エアロゾルのリーク確認テストも実施済みだ。

 CoroPAPの需要については、感染症にとどまらず「睡眠時無呼吸症候群」の患者も見込んでいる。睡眠時無呼吸症候群の患者は10~20%がフィッティング不良で脱落するため、重城氏は「そのような患者にも有用」と考える。今後は早期の医療機器登録を実現し、2021年の早い段階での市場投入を目指す。