ここ数年、日本の大企業ではコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の設立が相次ぐ。旧来のビジネスモデルからの転換を迫られる中、勢いのあるスタートアップを発掘し、自らの事業とのシナジーを図るのが主たる狙いだ。まさに「オープンイノベーション待ったなし」の様相を呈している。

 ソニーもそんな大企業の1つである。2016年7月にシード〜シリーズAを対象とした第1号ファンド「Sony Innovation Fund」(以下SIF)を設立し、積極的なスタートアップの発掘と投資を展開してきた。これはすべてソニー資本によるもので、ファンド規模は100億円、1社あたりの最大出資額は3億円となっている。

 当初はAIとロボティクスに的を絞っていたが、年を追うごとにより具体的な分野へと派生。テクノロジーの進化に伴い、ドローン、物流、ライフサイエンス、モビリティ、メディカルなどリアルテックの波が押し寄せたからだ。そこで2019年7月、新たに大和証券グループの子会社である大和キャピタル・ホールディングスと対等出資で、合弁会社「Innovation Growth Ventures」(以下IGV)を設立。ミドル〜ラージステージをターゲットとした第2号ファンド「Innovation Growth FundⅠL.P.」をスタートさせた。

 IGVによるファンド規模は2019年12月末時点で160億円、1社あたりの最大出資額は10億円と一気に増加した。運用をIGVが担い、ファンドにはソニー、大和証券グループに加え、メガバンク、リース会社、信託銀行、地方銀行、信用金庫、証券会社、学校法人が出資。連合体による潤沢な資金を背景に、今後はさらなる攻めの投資を進める。

 2020年2月17日、東京・品川のソニー本社にて、これまでの活動を報告するSony Innovation Fund記者説明会が開催された。壇上に立ったSIF投資・運営責任者、IGV代表取締役の土川元氏は、日本興業銀行、メリルリンチと金融のど真ん中を渡り歩いた後にソニーに入社した人物。ソニーでは米国での財務、事業開発担当、本社IR部門長、本社M&A部門長兼事業開発部門長などを歴任し、その経験を買われて新規事業発掘の任に就いた。

説明にあたったソニーの土川氏(写真:小口 正貴、以下同)

 土川氏はSIF、IGVのミッションを「事業戦略を支える直接的、間接的なアセットの早期獲得が目的。その先にオープンでスピーディな外部協業を実現すること」と定義する。その上で「吉田(憲一郎氏、現ソニー社長)からは、社内の探索部隊としてトレンドをいち早くキャッチして、社内で共有・紹介するようにと言われている。世界のテクノロジー市場は凄まじいスピードで変化している。そこに乗り込むためには、相応の見識とスピード感の両方が必要となる。それを実現するため、ソニーのエンジニアを巻き込みながら、投資チームが相当なスピード感を持って案件を実行していく」と語った。