UNICEFなど国際連合(国連)の関連機関が、新興国や発展途上国を支援するために諸外国から調達する製品やサービスの総額は年々増加し、2018年には188億ドル(約2兆円)とその規模は小さくない(関連記事)。米国やインドなどの企業がこの国連調達市場にいち早く進出し活発に動いている。一方で日本企業の動きはどうなのか。2月9日に都内で開催されたセミナー「国連、世界保健機関のグローバルヘルス戦略」(主催:長崎大学、UHC機器開発協議会)の議論から、国連調達市場の動向と進出のポイント、課題などを見ていく。

新興国で脆弱な承認の仕組みを補完

 まず国連調達市場の参入への第一歩となるのが、世界保健機関(WHO)による事前認証(prequalification:PQ)の取得だ。長崎大学熱帯医学研究所の教授でケニア拠点長の金子聰氏は、「国連調達の動向とWHO事前認証及び推奨の取得」というテーマでWHO認証を取得する意義などを話した。

 国連関連機関の1年間の物品とサービスの調達総額は、冒頭に触れたように日本円換算で約2兆円に上る。国連機関・国際機関、新興国・途上国の公共機関を含め様々な機関が大きな規模の調達を行っており、例えば、子どもの保健活動に取り組む国連児童基金(UNICEF)の2018年度の調達額は約3800億円。汎米保健機構(PAHO)は約1000億円、国連開発計画(UNDP)は約400億円、グローバルファンドが約400億円を調達する。この中にはヘルスケア以外のものも含まれるが、大半は医薬品や避妊具、ワクチン、医療機器などのヘルスケア関連製品・サービスの購入に充てられる。具体的には、エイズ治療薬や抗マラリア薬などの治療薬、結核やジフテリア、百日咳、破傷風、B型肝炎などの病気を予防するワクチン、体外診断薬や避妊具、注射器をはじめとする医療機器など。

 WHOの事前認証が必要となる背景には、新興国での承認の仕組みが脆弱であることがある。金子氏によると、WHOの事前認証は規制能力の不足を補う役割となる。WHOは各国の規制当局と協力し、国際的な規制の枠組みに合わせて、製品やサービスの安全性や効果などを審査。許容基準を満たすか確認し、国際的な基準に合わせた形で、新興国でも新しい製品やサービスを使えるようにしていく。WHOの事前認証には、「医薬品」「ワクチンと免疫」「体外診断機器と医療機器」「ベクターコントロール」の4部門があり、それぞれ認証プロセスを踏むことになる。

 認証取得までのプロセスは、書類に基づいて審査していくが、並行して実地調査と外部の試験機関による製品評価が1〜2年の期間をかけて進められる。全体のペースを決めるのは実地調査で、企画から調査を実施し、是正処置などを受けながら、修正を繰り返す形になる。最短で5カ月だが、長いと5年ほどかかることもある。こうしたプロセスは高速化していく方向になっている。

2月9日、都内で開催されたセミナー「国連、世界保健機関のグローバルヘルス戦略」(主催:長崎大学、UHC機器開発協議会、共催:大阪大学)(写真:星良孝、以下同)

 金子氏は、「国連関連機関の調達の中心であるデンマーク・コペンハーゲンに行くと、中国やインド、韓国の企業関係者の姿が目立つ。日本の企業も情報を収集して、開発の初期段階からそこに入っていき、国際機関のニーズを満たす製品やサービスを送り出すためのビジネスを構築する必要がある」と強調する。論文での評価などエビデンスが求められることもあり、大学などアカデミアとの連携も重要だという。例えば、長崎大学ではケニア、ベトナム、フィリピンに拠点を持つほか、北海道大学はザンビア、東京医科歯科大学はガーナにそれぞれ拠点があると紹介し、新興国での開発などで企業との連携を進めたいと金子氏は話した。