スマートフォンを使ってどこにいても眼科の診療を可能にする――。そんなソリューションの開発が進んでいる。

 手掛けているのは、2016年に眼科医3人で起業したOUI Inc.(ウイインク)。慶応義塾大学医学部が主催する「第2回 健康医療ベンチャー大賞」の社会人部門で優勝を勝ち取った同医学部発のベンチャーだ(関連記事)。

デバイスは実用化済、アプリは治験の段階へ

 眼科診療では一般に、細隙灯顕微鏡と呼ばれる検査機器がよく用いられる。帯状の光を患者の眼に当て、結膜や角膜、前房水、水晶体などを検査する。傷や炎症の他、緑内障や白内障など多くの眼病の診断ができるという。これをスマートフォン一つで実現しようというのが、同社のソリューションだ。

 具体的には、スマートフォンに装着する「Smart Eye Camera」(SEC)と呼ぶ機器と、診断支援アプリで構成する。

アタッチメントを装着したスマホで撮影した画像を、機械学習を用いて診断支援する(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)

 このうちSECは、細隙灯顕微鏡の代わりとなるもの。レンズを搭載しており、スマートフォンのカメラ部分に装着して利用する。カメラと隣接するライトの光を患者の眼に当て、レンズを通して眼球の状態を観察したり画像を撮影したりできる。2019年6月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ一般医療機器としての届出を行い、同年10月から臨床現場への導入を開始した。

 一方の診断支援アプリは、SECで撮影した画像から機械学習を用いて眼病の診断を支援するもの。今年度中に開発を終える予定で今後、プログラム医療機器としての承認申請を目指して臨床研究(治験)を実施していくという。

単に“いつでもどこでも”だけではないメリット

 OUI Inc. 代表取締役の清水映輔氏は、スマートフォンを活用した狙いを単に“いつでもどこでも”だけではないと語る。「位置情報を利用すれば、その地域でどのような眼病患者が存在するかも把握できる。既存の医療機器以上に、さまざまな情報を得ることが可能になる」(同氏)。

「マラウイ共和国の眼科医療における医学部発ベンチャーの使命と役割」をテーマにした特別カンファレンス(2020年2月20日に開催)で語るOUI Inc.の清水氏

 同時に、重要なターゲットと位置付けているのが、途上国や被災地など。「細隙灯顕微鏡などの検査機器がない環境でも、スマホさえあれば手軽に眼科診療できるようになる」(清水氏)。既にSECについては、ベトナムやモンゴル、アフリカ諸国などでの実証導入が始まっているという。

 失明原因の半分以上は、適切な診断と治療で克服が可能な白内障だとされる。清水氏は、今回のソリューションによって簡便な早期診断を可能にすることで「我々のミッションである『2025年までに世界の失明を50%に減らす』ことを目指す」と意気込む。


(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)