日本医療研究開発機構(AMED)は、経済産業省予算で2022年度からエビデンスに基づく予防・健康づくりの支援事業を開始する。民間主導で進む予防・健康づくりのヘルスケアサービスに対し、品質評価の仕組みなどを構築して、医療者や患者・消費者などが適切かつ効果的にサービスを活用できる環境を整える。関連する主要医学会ともタッグを組む考えで、今後、予防・健康づくりに関するガイドラインの策定やエビデンス構築のための新たなアプローチの研究方法の開発に携わる学会を公募する(詳しくはこちら)。

事業の開始にあたり、3月17日にはキックオフシンポジウムをオンラインで開催。AMED理事長の三島良直氏や日本医学学会連合会長の門田守人氏らが登壇し、議論を交わした。

 日本の医療研究の司令塔であるAMEDは、政府が掲げる「日本再興戦略」の柱として、2015年に発足。これまで医薬品や医療機器の実用化に向け、基礎から応用まで切れ目のない支援を進めてきた。

 ただ、人生100年時代を迎える中、健康寿命をさらに伸ばしていくためには予防の重要性が増しており、ここ数年来、アプリやウェアラブル端末などを用いたヘルスケアサービスが相次ぎ登場している。それらの中には、充分なエビデンスに基づかない商品が含まれているとの懸念も指摘されている。

 冒頭あいさつしたAMED理事長の三島氏はそうした事情に触れながら、だからこそAMEDが、質の高いヘルスケアサービスに向けた科学的なエビデンスの整理に乗り出すことにした旨を説明。その上で、「この事業を進めるにあたり日本の医療アカデミアが果たす役割は非常に大きい」とし、主要医学会に事業への積極的な参画を呼び掛けた。

日本医療研究開発機構理事長の三島良直氏
日本医療研究開発機構理事長の三島良直氏
[画像のクリックで別ページへ]

 続いて、モデレーターを務めた京都大学大学院医学研究科教授の中山健夫氏は、「AMEDが、これまでのライフサイエンスに基づく創薬などの研究開発・実用化支援をゴールとするだけではなく、もっと幅広い予防・健康づくりの事業を展開していくことに対して、「大変心強い」と評価。「AMEDの取り組みが、新しい医療、そして 社会を問い直す中のポジティブなメッセージを出せるとなることを心より願っている」と述べた。

京都大学大学院医学研究科教授の中山健夫氏
京都大学大学院医学研究科教授の中山健夫氏
[画像のクリックで別ページへ]

 その後、3人の登壇者がそれぞれプレゼンテーションを行った上で、ディスカッションに移った。

 プレゼンのトップバッターを務めた日本医学会連合会長の門田守人氏は、日本の医学会を束ねる立場にある。門田氏は、近年、医学・医療の発展とともに、医師の専門領域が細分化されることなり、狭い視野に陥りがちとなった点を問題視。結果、患者が置いてきぼりになってしまいかねないことを憂えた。

 一方、医学会連合としては、診断・治療にフォーカスするだけでなく、予防・健康づくりの重要性を十分に認識しており、加盟する57学会と、加盟していない23学会と合同で領域横断的なフレイル・ロコモ対策を進めていることなどを紹介した。

 あるべき医療の姿を追求するにあたっては、長期的な視点で国をより良い方向に導いていくために、「身近なところを細やかに見る『虫の目』、全体像を俯瞰して見る『鳥の目』、時流あるいは潮流を見る『魚の目』の三つの目を備えることが重要である」とも話し、AMEDと協力していく意向を示した。

日本医学会連合会長の門田守人氏
日本医学会連合会長の門田守人氏
[画像のクリックで別ページへ]