これまで分からなかった因果関係を担保

 実は今回の研究では、ゲノム情報を使うことによって、従来の医学研究の課題を解決している。

 これまで、どのような因子が寿命の長さや生活の質(QOL)などの健康アウトカムに影響を及ぼしているのかを明らかにするために多くの医学研究が行われてきた。原因を特定できれば、医療的な介入によって健康アウトカムを改善できる可能性があるからだ。

 代表的な研究手法として、バイオマーカーと健康アウトカムを直接比較する観察研究が挙げられる。肥満度やコレステロール値などの測定値と、その時点での健康状態に何らかの相関関係があるかどうかを調べる手法である。

 しかし観察研究では、測定値と健康アウトカムに相関関係が認められたとしても、因果関係を特定することが難しかった。例えば、肥満度と寿命の相関関係を調べると、「痩せている人ほど短命である」という結果が得られる。ただし、痩せていたせいで短命なのか、何らかの病気になったために寿命が短くなってしまった上に痩せたのかのかは特定できない──といった具合だ。このように、どちらが原因で、どちらが結果なのかが分からないことが課題だった。

 それに対して、今回着目したゲノム情報は生まれたときから変わらないため、因果関係が担保される。つまり、今回開発した手法を使えば、「寿命に関わるとされてきたバイオマーカーのうち、どれが正しいのか判断できる可能性がある」と岡田氏は期待する。実際、これまで寿命に関連する指標とされていた血清中のたんぱく質であるアルブミンについて調べたところ、アルブミンに関する遺伝情報と寿命には因果関係がないことが明らかになったという。

 研究チームは今後、世界で収集されているゲノム情報や臨床情報を使って、多様なバイオマーカーや臨床データ、人種集団と照らし合わせていきたいとしている。今回開発した手法を使って、個人の健康リスクを正確に予測し、医療によって改善できる課題を見つけることに活用していきたい考えだ。

(タイトル部のImage:伊藤 瑳恵)