培養細胞による研究から効果に注目

 現在、救命手段として酸素吸入が行われているが、いかにウイルス増殖を抑えるかが重要になる。現在までに様々な候補薬剤の使用が検証されている。例えば、抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬でプロテアーゼ合成阻害薬のロピナビル・リトナビル(商品名カレトラ)のほか、急性膵炎に使われるセリンプロテアーゼ阻害薬のナファモスタットやカモスタット、新型インフルエンザ治療薬であるファビピラビル(アビガン)、吸入ステロイドのシクレソニド(オルベスコ)、そしてRNA(リボ核酸)ウイルスの増殖を抑えるレムデシビル。抗マラリア薬のヒドロキシクロロキン、RNA合成を抑えるリバビリン、免疫機能を高めるインターフェロンも検討されている。

 今後、研究によってどれが有効であるのか見極めが進むことになる。日本では4薬剤の研究が進む。上記のカレトラ、アビガン、シクレソニド、レムデシビル。治療データを登録することに加えて、プラセボ(偽薬)などと比べて、治療効果が確かに存在するのかを見極めるのは重要だ。作用機序などから効果を示すと考えられても、死亡率の低下をはじめとした効果に本当につながるのかは、科学的に証明する必要がある。思わぬ副作用により、むしろ有害である可能性もある。

国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲氏

 今回、治験への着手が発表されたレムデシビルは、SARS-CoV-2の感染した培養細胞を使って行われた基礎研究から効果を発揮する可能性が示されている。「EC50」(50%効果濃度:薬の効果が最低値から最大値までの半分の値を示す濃度)に基づき、とりわけ低用量でウイルス増殖を抑えられそうだと分かったからだ。安全性のデータとしてエボラウイルスへの使用実績、薬理効果から投与する妥当性もあり、治験の計画に進んだ。2019年8月までアフリカのコンゴでエボラ出血熱が発生した際に、フィロウイルスと呼ばれる一本鎖RNAウイルスの1つ、エボラウイルスに実際に使われていた。大曲氏は、「モノクローナル抗体を使った治療の方が効果があるとされたが、人に使われて安全性が確認されたのが重要」と説明した。

 なお、レムデシビルは、米ギリアド・サイエンシズ社が保有する薬剤。ウイルスの持つRNA産生を減らす。ウイルスにはRNAウイルスとDNA(デオキシリボ核酸)ウイルスがあり、それぞれRNAとDNAという塩基がつながる構造だ。RNAウイルス、DNAウイルスのいずれも1本の塩基鎖からなるものと、2本の塩基鎖からなるものがある。レムデシビルは、一本鎖のRNAウイルスへの効果が確認された。一本鎖RNAウイルスには、呼吸器疾患の原因として知られるRSウイルスや、発熱などを特徴とするラッサ熱の病原体ラッサウイルス、ニパウイルスなどがあり、コロナウイルスもここに当てはまる。