産学連携で開発スピードを上げるには

 中島氏は、緊急対策としての機器開発を成功させる上では次の3つのポイントがあると説明する。(1)産学連携は堅持されるが、産は儲けを、学はデータをあえて放棄する、(2)ニーズは極めて明確だが、研究開発に許容される時間も短い、(3)とにかく早くモノを出すこと──。さらに、早くモノを出すためにはダーティー・プロトタイプ(dirty prototype)、バーチャル・エンジニアリング(virtual engineering)、ラピッド・プロトタイピング(rapid prototyping)の思想で物作りを進めたという。

 通常の産学連携では、ニーズ探索から事業化まで長い道のりがあり、製品化前に評価や検証を繰り返し、知財、外部資金獲得、論文執筆などが行われるため、開発スピードが遅れがち。バーチャル環境で素早く、常識にとらわれない機動力を発揮し、完全を目指さずにとにかく作ることが重要といえそうだ。中島氏は、「新型コロナウイルス対策では、開発をスピーディーに行い、世界全体で利用しやすいユニバーサルに通用するものであり、工場(fabrication facility)を必要としないファブレス(fabless)で、超低価格であることが重要」と強調した。

 中島氏の研究室は、日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代医療機器連携拠点整備等事業」補助を受けて工房を設置。3Dプリンターも備え、その仕組みを使って開発を進めた。

フェイスシールドの土台となるフレームとクリアファイル
フェイスシールドの土台となるフレームとクリアファイル
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 フェイスシールドの土台となるフレームの作製には、産学連携のネットワークから、メガネ産地として知られる福井県鯖江市のメガネメーカー、シャルマンの協力を得た。同社は医療機器も手がけ、飛沫防護シールドも製品ラインアップに持つ。スキルや経験も参考にさせてもらい、ユニバーサルデザインのメガネフレームを土台に検討。バーチャル・エンジニアリングを専門とする室崎氏が、コンピューター上で製品を設計。3月28、29日の土日の2日間で一気に設計。30日に試作品第一号を完成させた。

 発表も「通常の大学の発表は1カ月ほどかかる。論文に出しているか? オーソライズされているか? 等々が問われる。それが超短期間で実現した」(中島氏)と、新型コロナウイルス感染症の蔓延も踏まえ情報公開のスピードも速まったという。