世界に広がる3Dプリンター開発

 3Dプリンターで生産できるデータは即時に無料公開。中島氏によると、3Dプリンターでの製造に要する時間は0.4mmずつ積層した場合、フレーム1個当たり1時間15分ほど。製造原価は105.5~339円。フレームとなるABS材のコストが9割を占め86.7~315円。クリアファイルは18.8~24円。

 製造には3Dプリンターが必要だが、中島氏は「全国で次世代医療機器連携拠点整備等事業の補助を受けた17拠点で対応できるほか、大学やメーカーなど保有は広がり、装置を持った場所と協力して製造できる。3Dプリンター自体は3万円程度から入手できる」と説明する。

 世界で代替品が模索される中で、3Dプリンターを使ったバーチャルでのエンジニアリングの動きも活発になっている。フランスAFP通信によると、欧州ではフェイスシールドやマスク、人工呼吸器など多様な医療器具が、緊急的に製造されて、現場で使われている。米HP(ヒューレット・パッカード)も3Dプリンターで製造可能な医療器具のデータを公開する。

 緊急事態の下、新しいスタイルでの医療機器の開発が進む。平時なら低品質と見られるかもしれないが、それが、状況が変わることで新しい価値を持つ。これはまさにディスラプティブイノベーション(disruptive innovation)といえるだろう。

 中島氏は世界の国々で共通して使える安価な製品の開発を進める。国の経済発展の違いを踏まえたものだったが、感染症の流行という状況の違いが同様に新しい物作りの思想を生む。必要最低限の製品でできることが見えてきた先に、今回の自作可能な医療用具といった、これまでなかった発想からの技術が感染症終息後の世界で新しい価値を持つかもしれない。

大阪大学大学院医学系研究科次世代内視鏡治療学特任教授の中島氏(右)と同大学招へい教員の室崎氏
大阪大学大学院医学系研究科次世代内視鏡治療学特任教授の中島氏(右)と同大学招へい教員の室崎氏
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(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)