今回のプラットフォームで脳腫瘍の自動診断ソフトを開発

 同センター中央病院脳脊髄腫瘍科では共同開発されたプラットフォームを用いて、脳腫瘍の存在を判定できるAIソフトウエアを開発した。一つは、脳内で発生した原発性脳腫瘍の領域を推定するAIモデル。234例の原発性脳腫瘍の訓練用データセットにより脳腫瘍を検出するAIを開発。60例のテスト用データセットにより性能を評価し、良好な検出性能を達成した。「造影された領域と浮腫の領域を見極めるのが課題になるが、その検出が適切に行えた」と、同科の高橋雅道氏は説明する。同様に転移性脳腫瘍についても289例の訓練用データセットでAIを開発。38例のテスト用データセットで良好な検出性能を確認した。

脳腫瘍の存在を判定できるAIソフトウエア開発に取り組んだ、国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科の高橋雅道氏
脳腫瘍の存在を判定できるAIソフトウエア開発に取り組んだ、国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科の高橋雅道氏
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 センターでは構築したプラットフォームの活用を内部で広げていく方針だ。今回の共同研究は2016年から進められている国家プロジェクト、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)および2018年からの戦略的創造研究推進事業(PRISM)の一環で進められており、AI研究のペースを加速することになりそうだ。国立がん研究センター医療AI研究分野の長の浜本隆二氏は、「研究センターに蓄積されているがん患者などの臨床情報やゲノム、エピゲノム、画像情報や血液情報などの情報を統合し、がん患者の個人に最適化した医療の提供を目指していく」と説明している。

 富士フイルムでは日本国内の外部研究機関や医療機関でのAI開発プラットフォームの標準にすべく製品化を目指すほか、世界展開も見据えている。海外では英国公的保険のNHS、米国放射線専門医会、米国国立がん研究所などが同様な開発支援プラットフォームを構築しているという。

「世界展開を進めていく」と、富士フイルム専務執行役員メディカルシステム事業部長の後藤禎一氏
「世界展開を進めていく」と、富士フイルム専務執行役員メディカルシステム事業部長の後藤禎一氏
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 富士フイルム専務執行役員メディカルシステム事業部長の後藤禎一氏は、「1980年代の前半に世界に先駆けてコンピューテッドラジオグラフィの領域を拓き、PACS(医療用画像管理システム)を米国で開発。世界シェアアンバーワンとなった。医療AIの開発のプラットフォームの活用を進め、アカデミアの研究成果の社会実装という面からも産学連携の良い例になるよう尽力し、医療現場のニーズにも応えていく」と展望した。

(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)