コマンドセンター導入で看護師の残業時間が約44%削減

 松葉氏は、プレシジョン・ヘルスの具体的な取り組みについて語った。同社は診察・治療・フォローアップまで全ステージに関わる画像診断の分野で存在感を発揮。画像診断ではAI活用が普及し始めており、2022年度の診療報酬改定では適切な管理・運用下にある場合のAI画像診断支援が保険適用として認められるなど、最新技術に関する追い風が吹きつつある。

 「画像診断における一連のフローにAIを導入して効率化を図る。例えばディープラーニングによって短時間でノイズのない良質なMRIを提供したり、画像を先鋭化したりする『AIR Recon DL』などだ。

 また、画像診断関連のAIツールは領域、モダリティ(医療機器)に特化しており、非常に数が多い。診療報酬の評価を受けて今後も画像診断のAIアプリケーションは増えてくるだろう。そこで、どのような検査をどのAIに推論させるのか、最適な組み合わせを自動化する『Edison AI Orchestrator』を提供。医師の負担を増やすことなく、医療機器認証済みのAIアプリケーションを業務フローに組み込むことができるようになった」(松葉氏)

 高い医療提供体制維持に向け、リアルタイムデータの活用、病院運営効率化支援にも力を入れる。医療機器の効率的な最適化についてはAPM(Asset Performance Management)とCPM(Clinical Performance Management)を提供。機器の稼働状態を可視化し、改善提案から実行までを伴走する。「大規模市中病院ではCPM導入によって最終検査終了時刻が20分短縮され、予約待ち日数が23%短縮されるなどのポジティブな結果が現れた」(松葉氏)。

GEヘルスケア・ジャパン 執行役員 アカデミック本部長 兼 エジソン・ソリューション本部長 松葉香子氏(写真:小口 正貴)
GEヘルスケア・ジャパン 執行役員 アカデミック本部長 兼 エジソン・ソリューション本部長 松葉香子氏(写真:小口 正貴)
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 病床管理については、滋賀県草津市の淡海医療センターに導入した「コマンドセンター」を紹介。病床稼働率、看護師の空き状況、入退院・転入出の一覧などをリアルタイムデータによって一元的に把握し、院内の意思決定者が共有。コマンドセンター導入前と比較して病床稼働率は約4.6%向上し、看護師の1カ月残業総時間は約44%削減された。

 「経営陣の合意とサポート、現場の理解、円滑な地域連携が成功要因となった。患者にとって医療の質が向上することに加え、医療従事者は可能な限り病棟間での支援が受けられるなど、効果は大きかった。このことは当然、病院経営全体の健全化につながる」(松葉氏)

 今後は各病院や大学と連携しながら、医療の質と効率・人材を支えるリーダーシップ研修、AIやデータ関連の人材の育成プロジェクトなどを進める。「将来的には、ヘルスケアのすべての場面で低侵襲・高精度・個別最適化が望まれる。一つの場所で成功した事例を広く展開していくためにも、しっかりとした基礎固めをしていきたい」(松葉氏)。