慶応病院が実践する「AIホスピタル」構想

 ゲストには慶應義塾大学 医学部・医学研究科 放射線科学(診断)教室 教授の陣崎雅弘氏を招き、慶應義塾大学病院(慶応病院)が実践する「AIホスピタル」構想について講演した。

 慶応病院では2018年から「AIホスピタルプロジェクト」をスタート。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」が医療に対するAI活用で募集を開始したのがきっかけだ。

 「最も時間をかけたのは、どのような組織構造にするかということ。AIに興味を持つ一部の人たちだけが取り組んでも仕方がない。そのため全体が連動する組織変革を考え、各診療科にAI担当医を置き、ボトムアップで解決したい課題を吸い上げるようにした」(陣崎氏)

 そこから見えてきた研究課題を6分野に設定。内訳は1.患者の受付・問診・同意取得支援、2.患者との効率的な情報共有、3.患者の非接触・遠隔化、4.院内データの可視化、5.ロボットによる医療従事者の負担軽減、6.専門家支援用のデータベース構築となる。

 「一般的にAIと聞いてイメージするのは6.で、画像、病理、ゲノムなどを利用して人間と同じ高みを目指すものだろう。しかし我々はまず、単純なタスクの置換である1.〜5.での効率化を目指した。6.は論文が多数出ているものの、社会実装されていないからだ」(陣崎氏)

慶應義塾大学 医学部・医学研究科 放射線科学(診断)教室 教授の陣崎雅弘氏(写真:小口 正貴)
慶應義塾大学 医学部・医学研究科 放射線科学(診断)教室 教授の陣崎雅弘氏(写真:小口 正貴)
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 例えば1.ではタブレットを活用して問診票をデジタル化。診療時の音声情報をAIによってテキスト化し、自動的に電子カルテに記録する研究も続ける。2.の情報共有では、スマホアプリによって自分自身の医療データを保持。スマホのリテラシーが高い妊婦の超音波画像から始め、過去の検査結果も蓄積できるようにした。アトピー性皮膚炎や関節リウマチでは、日常生活の中で起きた異変をクラウドに記録して次回診察時の参考としている。

 4.の院内データ可視化では、松葉氏が触れたコマンドセンターを導入。「病床利用率の向上、看護師のタスクシフトの実現、患者ケアの向上に役立てている。直感的なタイル(管理画面)で構成されており、効率よく病床運用できることで、医療従事者の負担軽減はもちろん、経営面にも効果が出てくる」(陣崎氏)。

 もう1つ、GEヘルスケア・ジャパンのソリューションではAPMとCPMによる超音波装置の適正化・ライフサイクル監視、CT/MRIの運用最適化に成功。MRIでのAIR Recon DLも導入済みだ。

 「人ができない予測や、手間のかかる部分をAIに代替させるのがポイント。GEヘルスケア・ジャパンとは連携を図っており、これからもICT、AIを院内に実装して、実現可能なAIホスピタルモデルを構築していきたい」と陣崎氏。実装して有効だったソリューションや技術に関しては、さまざまな病院に横展開してく姿勢を示した。

(タイトル部のImage:小口 正貴)