GEヘルスケア・ジャパンは2021年4月22日、東京都内で成長戦略発表会を開催した。同社 代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏と執行役員・アカデミック本部長兼エジソン・ソリューションズ本部長の松葉香子氏が登壇し、現在の取り組みや新たな展開について講演した。

他社とのパートナーシップで仕組みを整える

 多田氏が強調したのは、リアルタイムデータの重要性だ。新型コロナウイルス感染症の流行を例に、人工呼吸器の数や重症患者と病床の占有率のデータなど、めまぐるしく環境が変わる状況を正しく把握するためにリアルタイムデータが必要だと訴えた。同時に、それを取得、活用するための仕組みが重要になるとした。

代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏。リアルタイムデータとその活用の重要性を語った(写真:宮川 泰明)

 同社が目指しているのは、患者一人ひとりにあわせた精度の高い診断、治療、観察を通して質の高い医療を提供する「プレシジョン・ヘルス」。ここにも、リアルタイムデータの活用は重要だとする。多田氏は「プラットフォームの共有や他社とのパートナーシップを通して仕組みを整え、課題解決に取り組んでいく」とした。

 続けて松葉氏は、画像診断の分野を例に同社の取り組みと他社との連携について紹介した。画像診断を行う際の診察から撮影までを上流、読影以降を下流とした時、それぞれ異なるアプローチを行っていることを説明した。

 画像診断にはAIの活用が切り離せない。同社は上流から下流までの製品を開発しており、いずれもAIの活用が進んでいる。画像の品質改善といった上流向けのアプリは自社開発を行うものの、診断などの下流に関するアプリは他社との協業を進めているという。さまざまな企業がそれぞれの領域でアプリを開発しており、目的に合わせてそれらを組み合わせることで高品質な診断支援を提供する。

執行役員・アカデミック本部長兼エジソン・ソリューションズ本部長の松葉香子氏。画像診断におけるAI活用とリアルタイムデータ活用の事例を紹介した(写真:宮川 泰明)

 一方、アプリの選択肢が多いと医師が選択するプロセスが必要になる。医師を支援するためのシステムが新たな負担にならないよう、アプリの選択を自動化する仕組みを取り入れているという。

 リアルタイムデータの活用については、草津総合病院に導入した日本初のコマンドセンターを紹介した。コマンドセンターでは電子カルテなどの院内情報システムのデータをリアルタイムで分析・可視化し、意思決定の補助をする。同院では病床の稼働予測と職員の作業の平準化、在院日数の管理といった用途で活用する予定だという。

 松葉氏は「医療の課題を解決するためにこうした最先端テクノロジーの研鑽は続けつつ、医療関係者のコミュニティ作りにも関わっていきたい」とした。

医療のデジタル化、マインドセット変革が必要と済生会熊本病院長

 成長戦略発表会には、ゲストとして済生会熊本病院院長の中尾浩一氏がリモートで参加した。同氏は、同院におけるデジタル化の取り組みについて説明した。

済生会熊本病院院長の中尾浩一氏。同院のデジタル化の取り組みを紹介した(出所:GEヘルスケア・ジャパン)

 中尾氏は「医療とデジタル化はそもそも相性が悪い」とした上で、デジタル化を進めるためにはマインドセットの変革が必要だと語った。「従来の医療は全体を複雑なものとして捉えており、直感的、情緒的でアナログな考え方が基本。それに対してデジタルは部分部分を要素として捉え、実証的、論理的な考え方をする。考え方が大きく異なることが医療のデジタル化が遅れる原因となっているのではないか」(同氏)。

 その際に鍵となる考え方が、「モジュール化」だと中尾氏は言う。診療のプロセスをシーンごとにまとめ、それぞれを評価できるようにする。これは、入院から退院までのプロセスを記した診療計画である「クリニカルパス」を作成する際に重要な要素になる。患者にとっては入院中の生活の流れが分かり、病院にとっては医師間でばらつきのあった医療の標準化ができる。

 モジュール化のもう一つの狙いは、データを構造化しやすくなること。構造化することで患者の状態の可視化、分析ができるようになる。ある疾病で在院日数が多くなる人にはどんな特徴があり、その原因は何なのか、それを防ぐにはどんな処置が必要なのかといったフィードバックが得やすくなり、医療の改善につなげることができる。中尾氏は「こうしたフィードバックを得るための取り組みがデジタル化を進めるための考え方の基盤になるのではないか」とした。

(タイトル部のImage:宮川 泰明)