手術の最終局面でAIが3つ程度のオプションを提示

 スマート治療室「SCOT」は、術中画像診断装置(オープンMRIなど)を核に、生体情報モニターや静脈注射を行うシリンジポンプ、電気メスなど手術に必要な機器をパッケージ化。各機器の情報を統合制御し、AIやロボットを活用して治療の安全性と効果の向上を目指すもの。日本医療研究開発機構(AMED)による支援の下、東京女子医大、広島大学、信州大学など5大学と、デンソー、日立製作所など国内企業11社による“オールジャパン”体制で、2014年から5年間にわたって研究開発が進められてきた。

 これまでに、「ベーシックSCOT」と「スタンダードSCOT」と呼ぶモデルが開発されてきたが、今回、東京女子医大病院に設置されたのは「ハイパーSCOT」と呼ぶ最上位モデルである。まずは簡単に、これらのモデルの違いを見ていこう。

 ベーシックSCOTは、MRIを中心とした医療機器の情報を統合可能な形にパッケージ化したモデル。2016年6月に広島大学病院に設置され、悪性脳腫瘍やてんかんなどの脳外科や、骨腫瘍など整形外科領域で40床例以上の臨床研究が行われている。既に国内4施設に導入され、海外展開も始まっている。

信州大学医学部附属病院に設置された「スタンダードSCOT」の全景(出所:AMED スマート治療室プロジェクト)
信州大学医学部附属病院に設置された「スタンダードSCOT」の全景(出所:AMED スマート治療室プロジェクト)
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 スタンダードSCOTは、手術室のほぼすべての機器をネットワーク化したモデル。2018年7月に信州大学医学部附属病院に設置され、これまでに臨床研究約10症例を施行。今後、さらに臨床研究を積み重ね、2020年に販売開始を予定している。

 そして今回のハイパーSCOTは、スタンダードSCOTをベースに新規開発のロボットベッドやAIによる手術ナビゲーションの実装を計画しているモデルである。東京女子医大病院では、2019年2月28日に脳神経外科に関する臨床研究を開始。情報統合による手術の効率性・安全性などを実証していく。

東京女子医科大学病院に設置されたスマート治療室の最上位モデル「ハイパーSCOT」(写真:Beyond Health、以下同)
東京女子医科大学病院に設置されたスマート治療室の最上位モデル「ハイパーSCOT」(写真:Beyond Health、以下同)
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 ハイパーSCOTでは、AIによる手術ナビゲーションを実装することで、AIが術者の意思決定を支援することが可能になる。村垣氏は、「例えば、(脳腫瘍摘出術の最終局面において)機能を温存するのか、生存率改善のためにさらなる摘出を行うのかジレンマが生じたとき、AIが3つ程度のオプションを提示してくれる」と説明する。AMEDの別のプロジェクトでは、摘出率と機能予測のAIアプリケーション開発が進められているという。