2020年代は「神経学分野の10年になる」

 次に、リサーチ ニューロサイエンス創薬ユニット アジアNCEプロダクション研究所長の一川隆史氏が、ニューロサイエンス創薬ユニットや湘南拠点特有の活動などについて説明した。

 武田薬品工業がニューロサイエンスに注力する理由について、一川氏は「ニューロサイエンス領域には、患者のいまだ満たされない医療ニーズがあるから」と説明する。近年はサイエンスの進歩によってイノベーションの起きる環境が整ってきたことから、治療困難な状況にあった神経疾患への対応力が向上。武田薬品工業としては「ニューロサイエンス領域の将来を決定づける変革点を迎えている」(一川氏)と考えており、2020年代は「神経学分野の10年になる」と予想する。

武田薬品工業 リサーチ ニューロサイエンス創薬ユニット アジアNCEプロダクション研究所長の一川隆史氏

 IRイベントとしては、2024年度までに3つのウェーブ1治療薬の承認が期待されている。1つは、希少てんかん症候群の発作コントロールを改善する「Soticlestat TAK-935(DSおよびLGS)」で、2023年度の承認可能性がある。残り2つは、希少過眠症に対するオレキシン(ナルコレプシー タイプ1)作動薬で、注射剤の「TAK-925」と経口剤の「TAK-994」が2024年度の承認を目指している。

 ここでポイントとなるのは、3つすべてがグローバル研究開発拠点の1つで武田湘南(R&D)から創出されたパイプラインであるということ。一川氏はこの点を強調し、「武田湘南のパイプライン創出力の高さ」をアピールした。

 武田薬品工業のニューロサイエンス創薬ユニットは、サンディエゴ、ボストン、湘南の3拠点で構成されるグローバル組織となる。疾患戦略としては、原因となる遺伝子が判明している希少神経疾患に注力するほか、患者のアンメットニーズが大きい神経変性疾患の中で徐々に原因因子が解明されつつあるパーキンソン病やアルツハイマー病にも投資しているという。また、武田薬品工業は「患者を第一に考える」ことをビジネスの最優先事項としており、グローバルの連携なども良好な組織が構築されていることから、一川氏は「それが当社の強みだ」と胸を張る。

 ニューロサイエンス創薬ユニットとしての湘南特有の活動には、In silico予想ツールによって創薬研究を加速化させるAIを用いた創薬研究、企業間でシームレスな社内創薬データを共有するオープンイノベーションな取り組みなどがある。とくにデータの共有に関しては、機械学習ではより多様性のある質の高いデータを学習することで精度の高いAIツールを開発できることから、複数の企業が非競争領域としてデータを共有することは「コスト面においても互いにベネフィットがある」と一川氏。そのため、武田薬品工業は「湘南ヘルスイノベーションパーク(略称:湘南アイパーク)」内の田辺三菱製薬と互いの社内評価データを共有する契約を締結。この提携によって創薬研究の効率化を期待するともに、今後は業界全体への拡大も計画する。