本格的な「人生100年時代」の到来を前にして、抗老化に関する研究が注目を集めている。中でも注目度が高いのが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の摂取による老化制御だ。NMNはヒトの加齢による機能低下や疾病の予防や改善効果が、マウスによる研究で報告されている抗老化成分。NMNカプセルは、老化を遅らせ健康寿命を延ばす可能性のあるサプリメントとして社会実装が進められている。

 この数年NMNを巡って待望されてきたのが、ヒトに対する効果の検証だ。4月22日(日本時間23日)、米ワシントン大学医学部(ミズーリ州セントルイス)の研究チームによる「世界初のNMN臨床試験に関する成果論文」が米科学誌「Science」のオンライン版に掲載され、話題となっている。

 この臨床試験を行ったのは、同大医学部部門・人間栄養センター長のサミュエル・クライン教授と同大医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授の研究チーム。前糖尿病(糖尿病予備軍)で肥満、閉経後の女性25人(55~75歳)を無作為に2群に分け、13人は1日250㎎のNMN、12人はプラセボ(偽薬)を10週間経口摂取した。その結果、NMN摂取群の骨格筋(筋肉)で、血糖値を下げるホルモンのインスリン感受性が平均25%上がり、2型糖尿病やその予備軍で低下する糖の取り込み機能が改善した。

記者会見に臨む今井眞一郎ワシントン大教授。今井教授は、2000年にサーチュインという全く新しい酵母の働きが酵母の老化・寿命を制御していることを発見。NMN分野のトップ研究者で、世界的に注目される抗老化研究の第一人者。

 プロダクティブ・エイジング研究機構が4月23日に開催したオンライン記者会見で、今井教授は、「25%インスリン感受性が上がったというのは、10%体重を落としたとき、あるいは、糖尿病治療薬のトログリタゾンを12週間投与したときに生じる改善に匹敵する。また、NMN摂取群では筋肉の再構築を促す遺伝子の働きが高まったことも確認された。NMNで筋肉の再構築の機能が高まるというのは、マウスによる研究でも分かっていなかったことで私たちも驚いた」と説明した。

4月22日(日本時間23日)、「Science」オンライン版に掲載された今井教授たちの研究チームによる成果論文